因島大橋の下に広がる布刈瀬戸は、昔も今も交通の要衝であり、難所。潮の流れが激しく、海なのに一瞬川かと見間違えるほどで、あちらこちらで小さな渦が巻いては消えていく。幅も狭く、船が安全に航行できるように、明治中期から大浜埼船舶通航潮流信号所が見守ってきた。その役目は昭和29年に終えたが、土木遺産として当時の姿のまま因島大橋記念公園の一角に残っている。近くには白亜の灯台もあり、青い海、空、橋とのまばゆいばかりのコントラストはずっと眺めていても飽きない。
時代をさかのぼって16世紀、このあたりの海を支配したのは村上海賊だった。因島は因島村上氏の本拠地で、布刈瀬戸を監視。海を知り尽くした海賊たちは、たくみな航海術で海を往来する船を守り、航路を先導する水先案内を行なった。因島には海賊たちが活躍した痕跡がそこかしこに残り、今も文化や伝統が息づいている。
村上海賊が活躍した時代から多くの船大工が住み、船づくりが発展した因島。
そのなかでひときわ個性を放つ造船所に出会った。
カーン、カーン。因島を巡っていると鉄を打つ音が心地よく耳に響く。東南部へ来ると、突然、おもちゃ箱から飛び出したようなカラフルな船が現れた。実はこれ、船ではなく造船所。創業96年の歴史がある石田造船所の3代目社長石田正憲さんが、「造船不況の危機を乗り越えるためにはアイデアが勝負」とインパクトを与えるために工場を改築したもの。その発想は船づくりにも発揮され、従来の構造や外観にとらわれない個性的で、夢あふれる船が生まれている。
事前に予約すれば工場見学ができ、ドックに入った修繕船や、桟橋に係船中の船舶を見ながら案内してもらえる。普段目にできない船底やプロペラも眺められ、かっこよくて惚れ惚れ。日本の造船業は、こうした高い造船技術や技術者たちの情熱に支えられているのだと胸が熱くなった。
住所/広島県尾道市因島三庄町字宝崎2931-4 TEL/0845-22-0482
工場見学はホームページよりメールにて予約申込。 http://www.ishida-zosen.co.jp/
■見学日:土日祝日を除く平日 ■見学可能時間:9:30~15:00 ■所要時間:約40分
■見学料:修学旅行や社会見学など子どもたちの工場視察を除き、一般団体研修及び旅行の方々については、施設管理費として一人500円。
因島のお好み焼だから「いんおこ」。船に使われる鉄板で焼くのが島流だ。
かつては造船に携わる人であふれかえったというレトロな商店街を訪れた。
土生商店街にある越智お好み焼店にやって来た。「いんおこ」は、うどんが入っているのが特徴のお好み焼。造船マンのお腹を満たすため、そばではなく腹持ちのいいうどんが使われたという。店によって具材や味が違い、越智お好み焼店では尾道から取り寄せた「のしイカ」が入る。38年間使い込んだ鉄板で油をひかずに焼くのでパリッと香ばしく、ヘルシー。「のしイカ」の旨みもしっかり出て、特製ソースとの相性が抜群だ。
住所/広島県尾道市因島土生町1902
TEL/0845-22-0932
営業時間/11:00~17:00(16:30L.O.)
定休日/木曜日
毎年5月になると、因島は除虫菊の白い花のじゅうたんが広がる。その光景は清楚で美しい。大正から昭和にかけて、蚊取り線香の原料として除虫菊栽培が盛んに行なわれ、最盛期には島が真っ白に染まったそうだ。現在は観賞用として、因島フラワーセンターや重井町エリアを中心に栽培されている。5月3日、4日には除虫菊まつりが因島フラワーセンターで開催され、花つみや線香づくり体験を楽しめる。線香づくり体験は、4月第2週から5月末までの毎週日曜日にも行なわれ、予約不要で参加できる。
住所/広島県尾道市因島重井町1182-1
TEL/0845-26-6212(因島総合支所しまおこし課)
営業時間/9:00~17:00
定休日/火曜日(祝日の場合は翌日)、12/29~1/3