大島には島四国と呼ばれる巡礼の道がある。春はへんろ市が開催され、
のどかな風景を楽しみながら島内にある八十八の札所を巡り、島人の温もりにふれられる。
四国霊場になぞらえ、大島島内に点在する八十八ヶ所の札所と3つの番外札所を巡礼する島四国。毎年4月の第3土曜日を初日とする3日間は「へんろ市」が開催され、全国各地から白装束姿のお遍路さんがやって来る。海南寺、高龍寺、法南寺、福蔵寺の四ヶ寺は住職が常駐するが、それ以外は地域の人が守っているため普段は無人。この3日間だけは各札所で島人によるお接待が行われるのだ。
島四国は瀬戸内の各所にあるが、大島は200年以上の歴史があり、真言宗の総本山仁和寺から公認された由緒正しき巡礼地。医師の毛利玄得らが発願し、四国霊場を何度も巡礼し、ロケーションを模して札所を建てた。素朴で、四国の八十八ヶ所もきっと昔はこんなふうだったのだろう。巡っているとのどかな風景に出会え、しまなみ海道の橋もさまざまな角度から楽しめる。昔は船でお遍路さんが島に来るのは大変なことだっただろう。だから来てくれたことが嬉しくて、手厚くもてなしたのだ。どの札所もきれいに手入れが行き届き、花や供え物がされ、地域の人たちに大切に守られていた。