

美しい色彩で愛に満ちた作品を描いたマルク・シャガール。鋭いまなざしで被写体を撮り続けた写真家・石元泰博。質、量ともに世界が注目する二大コレクションを核に、キース・へリングやアンディ・ウォーホルなど近現代の作家、高知ゆかりの作家を収蔵し、魅力あふれる展示を行っている高知県立美術館。シャガールと石元作品については専用展示室があり、特別な展示を除いてほぼ一年中さまざまなテーマで鑑賞でき、何度でも足を運びたくなります。
戦後日本の写真界に影響を与え、国際的な評価も高い写真家・石元泰博。サンフランシスコで生まれ、幼少期を両親の郷里の高知で過ごし、シカゴのインスティテュート・オブ・デザインで写真を学んでモダニズムの真髄といえる造形感覚を身につけました。高知県立美術館では生前からプリント、ネガフィルム、カメラ機材など膨大な量の寄贈を受け、石元泰博のすべてがあるといっていいほどです。よく知られているのは丹下健三など建築家の作品の撮影ですが、その眼は伝統や街、子どもなど幅広い被写体に向けられました。代表作の《桂離宮》は、それまで雰囲気をとらえた写真しかなかった桂離宮を水平や垂直を強調した端正な構図で撮影。〝視覚のバイリンガル〟と呼ばれるように日本的かつ欧米的な感覚をミックスし、こんな見方があるのかとはっとさせられます。
来年1月からは生誕100年を記念して過去最大規模で企画展を開催。桂離宮やシカゴ、東京の人や街を撮影した代表作に加え、多様な被写体をとらえた250点以上を展示。プライベート写真やカメラ機材もあり、石元作品の魅力に迫れます。
11月3日は高知県立美術館の開館記念日。この日から特別展「隈研吾展」がスタートします。隈研吾は国立競技場を設計し、日本を代表する建築家。木材を使い、和をイメージしたモダンな建築が印象的です。特別展では公共性の高い隈建築を写真や模型を使って自ら解説。どのように発想し、どう組み上げていくのかが明かされます。また、未来の都市について隈の好きなネコの視点から考えるフィールドワークによる作品も展示。隈ワールドを堪能できます。
目の前のものを主観で幻想的に描いたマルク・シャガール。高知県立美術館には油彩画5点、版画1202点があり、版画集はほとんどを網羅。油絵はキュビズムの影響や自分のスタイルを確立した全盛期の作品などを見比べることができます。ロシア出身のユダヤ系画家として二度の大戦を経験し、環境や心の変化も作品から感じ取れます。
普段は常設展示されているシャガールですが、「隈研吾展」の期間中はお休み。しかし来年1月から再開され、油絵5点と版画《ラ・フォンテーヌの寓話》が展示されます。モノクロームの版画の一部分のみに色を置く手彩色の技法を見ることができ、シンプルゆえにイマジネーションをかき立てられます。
11月3日(火・祝)~2021年1月3日(日)
入場は事前にwebでの予約が必要です。
11月3日(火・祝)
日本が誇るサーカスアーティストによる空中ブランコなどのパフォーマンスを披露。
11月3日(火・祝)~2021年1月3日(日)
滋賀の寺々に伝わる秘仏を撮影したシリーズを紹介。普段は見ることができない仏像の豊かな表情や姿を迫力ある写真で拝めます。
11月7日(土)~15日(日)
精神科医フロイトと寺山修司からインスパイアされた作品。架空の家族の悪夢と恐怖の映像をVRゴーグルとヘッドフォンを装着して歩きながら自由に鑑賞。どんな映像を見たかや視線の動きで自分の精神状態が分析されます。予約要。
11月18日(水)~22日(日)
サスペンス映画の巨匠フリッツ・ラングとコメディ映画の巨匠エルンスト・ルビッチの監督作品を上映。無声映画ではサックス・坂田明、ギター・大友良英らによるライヴパフォーマンスもあります。
10月25日(日)~12月20日(日)
高知県須崎市出身の作家。絵画やコラージュ、インスタレーションなどの技法を自在に組み合わせた独自の風景表現を楽しめます。
2021年1月16日(土)~3月14日(日)
2021年1月16日(土)~2月28日(日)
教訓や皮肉の混じった戒めを伝える17世紀に出版された寓話詩集で、その挿絵として制作された版画を展示。
薄くて丈夫で風合いのある土佐の伝統工芸品、土佐和紙がメモに。館内では土佐和紙をドーム型の天井に貼って利用しています。
住所/高知県高知市高須353-2 TEL/088-866-8000
営業時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/12/27~1/1
料金/コレクション展:一般370円、大学生260円、高校生以下無料
※企画展ごとに異なります。
駐車場/あり