
仁淀ブルーだけでなく、岩の造形美や、コケ、イワタバコ、ユキノシタ、マメヅタなど種類豊富な植物に癒やされる。川にはアメゴの姿も。
ゴツゴツとした岩の間を青く透き通った水が流れている。前日に大雨が降ったのに一滴の濁りもない。中津渓谷は、中津明神山から流れ出した水が長い年月をかけて岩を削ってできたV字渓谷。幅が狭く勾配があるため流れが速く、すぐに水が生まれ変わる。大雨が降ると岩のコケを洗い流してさらに透明度を増すのだ。不純物の少ない水は青い光だけを反射し、奇跡の仁淀ブルーが生まれる。光の当たり方や季節で色を変えるのも神秘的。
渓谷を縫うように遊歩道が整備され、巨岩の隙間をすり抜けたり、渓谷をまたぐように空中を歩いたり、苔むした岩や木々が美しい森を通ったり、次々景色が変わるのが楽しい。
なぜか七福神の石像があちこちにある。昔からこの地では山に神様が宿っていると考え、崇めてきた。斜面ばかりで田んぼが作れず、米がとれなかったため、山から切り出した木材を生活の糧とし、「いかだ師」が川を利用して運んだ。いかだを流すためには十分な水量が必要で、雨乞いをし、命がけの川下りの安全を祈ったのだ。その信仰が息づき、自然が大切に守られ続けている。
七福神に導かれるように奥へ進むと、散策のハイライトである雨乞いの神様・雨竜の滝にたどり着いた。
雨竜の滝の圧倒的な存在感に身震いする。そそり立つ巨岩の間から爆音と水しぶきをあげて大量の水がかけ落ちる。
飾られたしめ縄が神聖な場所であることを示し、静かに手を合わせた。
せっかくなら夜空も観察しよう。
町のイルミネーションがないここでは星の小さな輝きまで見え、満天の星が降り注ぐ。
「中津渓谷は見どころいっぱいで、ガイドと一緒だと見え方が変わりますよ」と地元で生まれ育った山中陽子さん。雨竜の滝まで約1時間で散策を楽しめる。
昼と夜の寒暖差やミネラル豊富な水、適度な日照時間、川からの朝夕の霧が、香り強くおいしいお茶を育む仁淀川町。「茶農家の店あすなろ」は、店主のご主人がお茶で地域を元気づけたいと祖父母の茶畑を引き継ぎ、仁淀川のほとりに広がる沢渡(さわたり)地区で栽培した沢渡茶を味わえる。沢渡茶や仁淀川町の食材を使った食事やスイーツも絶品で、夏はかき氷やソフトクリームが人気。テラス席や大きな窓から仁淀川を眺めながらゆったりくつろげる。