
バンズ、パティ、ソース、野菜。すべてにこだわり抜いたBAKE STUDIO OKAZAKIのクラフトハンバーガー(下記掲載)
旅心を誘う秋の風。心に沁みる景色に出会いたいと、香川県西部に位置する西讃地域に向かった。一帯にはフォトジェニックなスポットが点在しており、数年前から「映える」写真を撮るために多くの人が押し寄せている。そんな観光客を喜ばせているのが、こだわりのクラフトフードが味わえる店。このエリアなら、絶景と美味しいもの、その両方を楽しめるというわけだ。
まず目指したのは、瀬戸内海に突き出た荘内(しょうない)半島。浦島太郎伝説が残る島で、地名や太郎の墓などゆかりを感じさせる風物にも出会える。標高352mの紫雲出山(しうでやま)は、浦島太郎が玉手箱を開いたときに、紫色の煙がたなびいた山だといわれている。展望台からは360度パノラマの絶景が満喫できる。天気が良ければ、箱庭のような瀬戸内海に架かる瀬戸大橋までくっきりと見えるかも。
「天空の鳥居」の愛称で知られているのは、標高404mの稲積山(いなづみやま)山頂にある高屋神社。平安時代に編纂(へんさん)されていたとされる「讃岐国延喜式(さぬきのくにえんぎしき)」に記載されている由緒ある神社で、もともと社は山頂にあった。江戸時代の初めに山腹へ、さらに江戸時代半ばに山麓へと遷宮されたが、訳あって江戸時代後期に再び山頂へと戻された。一説には里人が祟りを恐れたためだとか。
麓の下宮から本宮までは約1.5㎞。1時間ほどの登りを覚悟しなければならない。山道を抜けて、一息ついたと思えば、目の前には270段の石段。何とか気持ちを奮い立たせて足を進めると、ようやく本宮に辿り着いた。息を整えてお詣りを終えたら、鳥居越しの景観を楽しむ。眼下に広がる観音寺市街と瀬戸内海を眺めれば、道中の疲労は一瞬にして消え去った。
天空の鳥居は、昼間もさることながら、夕焼けのドラマチックな情景もおすすめ。オレンジ色に染まった穏やかな海面がベルベットのようで、絵画のような美しさを見せてくれる。ただし、帰路の安全を考慮し、夕陽が沈み切る前に下山を。
夕暮れ時の美しさなら、紫雲出山も負けていない。瀬戸内の多島美が夕日に照らされる様子は、言葉にできないほどの美しさ。とりわけ太陽が沈む手前の一瞬、紫色に染まった空とオレンジ色の雲の取り合わせの妙は、これから先も忘れることはないだろう。
絶景めぐりも一段落し、そろそろお腹も空く頃だ。そこで立ち寄ったのが、「日本のウユニ塩湖」と呼ばれているビーチ「父母ヶ浜(ちちぶがはま)」。ここにはとびきり美味しいハンバーガーの店「BAKE
STUDIO
OKAZAKI(ベイクスタジオオカザキ)」がある。店主の岡崎尚規さんは香川県生まれ。関西で約10年間、製菓・製パン職人として修業し、地元へと帰ってきた。当初はパン店を開こうと考えていたのだが、父母ヶ浜に店舗向けの敷地があることを知り、下見した際に、ハンバーガー店を思いついた。海辺のロケーションとハンバーガー、その組み合わせの良さはもちろん、彼が音楽やファッションなどアメリカのカルチャーが好きだったことも少なからず影響したという。
2018年9月にオープンした同店は、たちまち行列ができる人気店となった。その理由は、「地元産」を巧みに生かしつつ、創意工夫して組み立てた味のバランスにある。西讃地域には、発酵文化が根付いており、古くから続く麹(こうじ)の製造元が複数ある。岡崎さんは、バンズの発酵種として、地元の米麹を自家培養した天然酵母を使用。また、三豊特産の長期間熟成させた醸造米酢「仁尾酢」を使ったレリッシュソース、シャキシャキとした香川産のフリルレタスなど、地元の良いものを上手に生かしたのだ。
主役のパティは、和牛やグラスフェッドビーフをブロックで仕入れて、自家で挽いている。噛むほどに、ギュッと濃縮した肉の旨みが溢れ出てくる。
2021年には、隣にドーナツ専門店「DOUGHNUT-HOLIC(ドーナツホリック)」を開業。野菜のペーストを隠し味にしたしっとり生地は、「翌日食べても美味しい」と評判だ。海を眺め、潮騒を聞きながらアメリカン・フードにかじりつくと、西海岸を旅しているような気分をも味わえた。
住所/香川県三豊市仁尾町仁尾乙274-9
TEL/0875-23-6921
営業時間/11:00〜18:30(売り切れ次第終了)
休み/不定(土・日曜、祝日は営業、
平日の営業はインスタグラムで告知)
駐車場/父母ヶ浜駐車場利用(無料)
Instagram/bake_studio_okazaki
住所/香川県三豊市仁尾町仁尾乙274-12
TEL/0875-23-6921
営業時間/11:00〜17:00(売り切れ次第終了)
休み/水・金曜
駐車場/父母ヶ浜駐車場利用(無料)
Instagram/doughnut_holic
父母ヶ浜のマジックアワーまでは、まだ時間がある。ここから車で10分ほどのところにある「RACATI(ラカティ)」に足を延ばした。ご当地素材の和三盆(わさんぼん)や父母ヶ浜の塩、香川本鷹(唐辛子)、高瀬茶、瀬戸内レモン、香川産ラムなどを使ったチョコレートが評判のお店。産地から仕入れたカカオ豆をハンドピックで選り分けするところから、焙煎や成型まですべて自家で行う、"BEAN to BAR"スタイルだ。イートインスペースでは、チョコレートを使ったオリジナルドリンクやスイーツが味わえる。
さらに店内の一角には、土・日のみ営業のサンドイッチ専門店「エブリワンズサンドイッチ」も併設。新鮮な野菜をたっぷりと挟んだサンドイッチは、カリッと焼かれたパンとシャキシャキ野菜のハーモニーが絶妙。
お土産のチョコレートを調達したら、再び父母ヶ浜へ。ビーチのあちらこちらで、思い思いのポーズを取りながらの撮影が行われている。狙い目は夕暮れの干潮時。「瀬戸の夕凪」とも呼ばれる風のない時間帯、潮溜りが鏡面のようになるのだ。沈みゆく夕日、茜色から紫色へと変わっていく海と空。奇跡のような美しさは、忘れられない景色として心に刻まれた。
住所/香川県三豊市詫間町詫間6781-1
TEL/0875-83-6652
営業時間/10:00〜18:00
定休日/水曜
駐車場/あり
Instagram/
racati_chocolate
HP/https://racati.com
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