平成29年1月21日(土)、明石海峡大橋を目の前に臨む「橋の科学館」において、第26回講演会「日本の技術で海外に吊橋を ~トルコ オスマン・ガーズィー橋のご紹介~」を開催しました。本日は(株)IHIインフラシステム取締役 川上 剛司氏に講演を行っていただきました。

まず、トルコ共和国の概要、インフラ事情など説明して頂きました。
トルコは経済発展が盛んな国であり、GDPの成長率は4.0 %に達します。一方で国土を繋ぐ高速道路や鉄道などのインフラが十分に整備されていないため、現在工事が進められています。トルコも日本と同様の地震国であり、近年のものでは2011年のヴァン地震(M 7.1)、1999年のコジャエリ地震(M 7.4)が挙げられます。このため耐震性のあるインフラを整備する必要があります。

次に本題であるオスマン・ガーズィー橋(イズミット湾横断橋)の説明をして頂きました。オスマン・ガーズィー橋は、トルコ最大都市であるイスタンブールとトルコ第3位の都市イズミル市を結ぶ420kmの高速道路プロジェクトの一部として、トルコ北西部に位置するマルマラ海のイズミット湾を南北に横断する全長2,907m(中央径間1,550m)の世界第4位の吊橋です。橋を建設する地点の近くイズミット湾沿いに断層が存在するため、耐震性を上げる必要があります。構造物を断層の真上に置かないように配置し、特に主塔基礎は、基礎から深度40mの海底地盤改良の方策として、「直径2m、長さ34.295mの鋼管杭を195本打設。更に、巨大地震時にケーソンが海底地盤上を滑ることによる免震効果を確実に得るため、鋼管杭上に厚さ3mの砕石層を敷設。レベリングした上にコンクリート製のケーソンを沈設。」など耐震性を上げるため設計・施工に取り組んだことを説明していただきました。
また、強い風が吹きやすい環境であるため、明石海峡大橋などと同様に、1/220全橋模型を組んで風洞試験により耐風安定性の確認を行い、主ケーブルの防食には、S字ワイヤーラッピングでケーブルを覆い、ケーブル送気乾燥システムが採用されるなど日本で開発された多くの技術が生かされていることを紹介して頂きました。

このように施工段階毎に写真スライドで説明していただいたあと、施工時の動画を視聴しました。全体の工期が短く設定されているだけでなく、作業の区切りとなるケーソンの設置や桁の閉合などを決められた日程で行われたことなどに驚かれた方、本四連絡橋の架橋の光景を思い出された方など、いらっしゃったようでした。

次回講演会は3月11日(土)に橋の科学館にて行います。講演者は(株)ブリッジエンジニアリング 常務取締役 富田大造 氏、題目は「東日本大震災が発生した3.11 改めて、安全や防災の意識を高めよう!」を予定しております。

詳しくはこちらをご覧下さい。
http://www.hashinokagakukan.jp/news/shosai.php?id=97


会場の様子

トルコ共和国の概要

インフラ整備の状況

IZMIT湾横断橋の概要

主塔基礎 耐震設計

参加者からの
質問に答える川上氏