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「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 岡山県・華鴒大塚美術館 写真

倉敷市 三宅さま(男性)

訪問日:2016年5月26日

岡山県のジーンズについては、児島(倉敷市)が「国産ジーンズ発祥の地」、井原が「ジーンズのふるさと」としてクイズ番組などでも紹介されているので、みなさんご存じのことかと思います。井原地域は古くから繊維産業のたいへん盛んな地域です。

華鴒大塚美術館は、その井原・福山地方を拠点に繊維・電子関連の企業活動を展開するタカヤグループが設立した美術館です。美術館名の「華鴒」(かれい)は、織物事業で生産していた備中小倉織の商標に由来するそうです。

今回、初めてこの美術館を訪れましたが、ちょうど「ふろしき原画 包むための絵」という企画展が開催されていました。繊維産業つながりなのでしょうか、風呂敷の製造卸の老舗「宮井」(京都市の会社)の所蔵品のうち、原画88点と風呂敷29点が展示されていました。「宮井」は日本画家に原画を依頼して、その原画をもとに芸術性の高い風呂敷を製造してきたそうです。

せとうち美術館ネットワークでもお馴染みの日本を代表する画家の作品を見ることができました。たとえば、小野竹喬(笠岡市立竹喬美術館)、東山魁夷(香川県立東山魁夷せとうち美術館)、池田遙邨(倉敷市立美術館)が風呂敷の図案を描いていたことは驚きでした。

風呂敷には構図パターンがあり、使う人のことを考えて図案を描く必要があるそうです。物を包んだときにどのように見えるかまで考慮に入れるとすれば、大変だなあと思いました。

展示品の風呂敷は、実際に箱や瓶を包んだ状態で展示されていました。包み方にも「お使い包み」「花びら包み」「合わせ包み」「うさぎのしっぽ包み」など、いろいろな名前がつけられています。用途に合わせた包み方があるものだなあと感心しました。

二次元の名画(原画)と、風呂敷として物を包んだ三次元の状態で対比的に展示されていることが新鮮でした。名画が風呂敷という日常品になって、私たちの生活に溶け込んでいる伝統文化はたいへんすばらしいと誇らしく思いましたが、同時に、現代の私たちの生活に風呂敷を使う機会がめったにないことを申し訳ないようにも感じました。

展示作品の他に、日本庭園が見ごたえがあります。また、「はなとり展示室」と名付けられた部屋は、靴のまま入ってもいいのかなと戸惑うような和室っぽい展示室でした。これらも華鴒大塚美術館の魅力だと思います。次回は常設の日本画を目当てに、とっぷり和のテイストに浸りに来館したいと思っています。