岡山県の北西部にある新見市は、中世の時代に京都の東寺の荘園として栄えた地。その高台に新見美術館があります。日本画のコレクションで知られ、特に富岡鉄斎の作品は若い頃から晩年まで関連作品を含めて約70点あり、注目されています。2020年2月からは開館30周年を記念して鉄斎コレクションの全作品が展示されます。
富岡鉄斎はプロの絵師ではなく、日本や中国の古典故事や文学、儒教などを学び、余技的に書画をたしなんだことから文人画家と呼ばれています。幕末から明治まで89歳の天寿を全うし、不老不死の理想郷とされる蓬莱山などを好んで描きました。その絵は様式、技法にとらわれない自由な筆致で、「賛」といわれる文章が添えられ、教訓的なことが描かれているのが特徴です。なかでも晩年の作品は素晴らしく、70歳代半ばの緑青で彩色された山水画、80歳に入ると雲がわきたつような水墨の世界が描かれ、圧倒されます。
実は美術館設立のきっかけも鉄斎でした。地元出身の横内正弘氏が作品を見て感激し、研究、収集したコレクションを新見市に寄贈したことが始まりです。鉄斎コレクションの全容に触れるまたとないチャンスです。お見逃しなく。