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とびしま海道
徳島県・阿波和紙

海のように神秘的な
藍染和紙に魅せられて

藍色ののれん、仕事着など、
藍染は昔から日本文化を彩り、暮らしのそばにあった。
そのひとつとして江戸時代に作られていたのが藍染和紙。
一度は途絶えたその伝統を復活させた阿波和紙の工房を訪れた

コンクリート打ちっぱなしのモダンな工房で、職人たちが忙しそうに和紙を手漉きしている。ここは約1300年の歴史がある阿波和紙を、現在も唯一作り続けているアワガミファクトリー。

この地で和紙づくりが盛んになったのは、近くに吉野川の支流・川田川が流れ、紙を漉くのに大事な水が豊富にあり、原料のコウゾ、ミツマタ、ガンピがとれたことから。農閑期の副業がやがて専業となり、明治時代には工房がある山川町周辺で200軒もの家が紙漉きを行っていたという。戦後のライフスタイルの洋風化で衰退してしまったが、アワガミファクトリーは伝統の技を受け継ぎながら新たなる可能性を追求し、画期的な和紙を生み出している。

かつて吉野川をはじめ県下の各流域では数多くの紙漉きが行われていた。その始まりは「古語拾遺」(807年)という資料に、朝廷に仕えていた忌部氏が麻やコウゾを植えて紙や布づくりを盛んにしたという記録が残っている。それが由来となり山川町は麻植郡(おえぐん)と呼ばれていた。
エントランスに入って一面ガラス張りの向こうに工房があり、全体を見渡せる。薄くて丈夫な和紙のイメージをくつがえし、2m角の巨大で分厚い和紙も作っている。
職人たちが昔ながらのやり方で一枚一枚紙を漉いていく。
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藍一色で生み出される美に染師の技が冴える

驚くほど多彩な染め和紙に目を奪われる中、特に引きつけられたのが藍染和紙。染師の藤森美恵子さんは、アワガミファクトリーを営む和紙製造所の家に嫁ぎ、江戸時代に作られていた藍染和紙を復活させた技を、義母から受け継いだ。

藍液に浸した和紙が引き上げられてびっくり。藍色だと思っていたらワカメのような緑色をしている。しばらくすると少しずつ藍色に変化し、その様子はまるで魔法のようだ。藤森さんは藍一色で多彩な色や模様を生み出すため、紙質や気温を考慮し、藍液に浸す時間や回数、浸し方を変えていく。これをデータ化し、義母が勘でやっていた作業を後世に伝えられるように地道に取り組んでいるのだ。

海のように深く濃い藍色、空のように透き通った藍色、ストライプ、ぼかし、絞りなど表情豊かな藍染和紙は、ふすまやタペストリーとして飾るのにぴったり。クッションカバーに利用できるほど丈夫というのも意外だ。ショップでは名刺入れやペン皿などのグッズとして販売され、普段使いで楽しめるのがうれしい。工房では紙漉き体験もできるので、職人気分を味わおう。

徳島県特産の藍染料「すくも」から建てた藍液に和紙を浸して染めていく。藍液から出し、空気にふれて酸化することで緑色から藍色に変化。
和紙や藍液と対話しながら完成。重なり合うグラデーションが美しい。
藍はかつて暴れ川だった吉野川からの贈り物。台風の氾濫によって育まれた肥沃な土により連作が可能となり、台風前に収穫できた。

和紙を手漉きしてみよう!

和紙の手漉きは、コツを教えてもらえば初めてでも簡単にできる。手軽なはがきサイズから、半紙サイズ、3時間で好きなだけ漉けるコース、予約が必要だがハンカチの藍染体験もでき、自分だけのオリジナルを作ることができる。
ハガキ判コースは1枚170円から。

無地の紙を漉いた後、色つきの原料で好きな模様をつけることができる。
デザインした和紙を乾燥し、1枚約30分で完成!

ショップで藍染和紙の
文具が手に入る

名刺入れ 990円
折り本(小)ぼかし 1,980円
ペン皿(小)1,210円
DATA 阿波和紙伝統産業会館

阿波和紙の啓蒙と継承を目的に平成元年に建てられた。1階にアワガミファクトリーの工房がある。他にもショップ、ギャラリーがあり、本格的に手漉き和紙を学べるワークショップや研修会も開催。国内外のアーティストとも交流し、要望に応じた多様な和紙作りに挑戦している。インクジェットにプリントできる画期的な和紙も開発。

住所/徳島県吉野川市山川町川東141
TEL/0883-42-6120
営業時間/9:00~17:00
定休日/月曜日(祝日の場合は火曜日)、年末年始(12月30日~1月2日)
入館料/一般300円、学生200円、小中学生150円
駐車場/あり

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