ホーム > 瀬戸マーレ vol.50 > アートトラベラー vol.7

アートトラベラー

香川県 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 訪れる人の「心の病院」となる美術館

猪熊弦一郎《黄色いスカートの婦人》1946年
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵
©公益財団法人ミモカ美術振興財団
スカートの形が変形され、リズムが生まれている。30代に渡仏し、アンリ・マティスと出会った影響が体の形や色彩に感じられる。

70年にわたる画業において、常に好奇心をもち、新しいものに挑戦し続けた猪熊弦一郎。少年時代を過ごした丸亀市には、猪熊が理想とした「美術館は心の病院」という思いを具現化した丸亀市猪熊弦一郎現代美術館があります。猪熊と建築家・谷口吉生が対話を重ねてつくりあげたもので、誰でも気軽に来て、疲れた心を癒やし、元気を取り戻せるように、JR丸亀駅前の便利な場所にあります。広く光あふれる空間は、いるだけでリフレッシュできます。

興味深いのは展示内容。猪熊は自分の作品を中心とする記念館のようなものではなく、現代アートを紹介する役割を重視。今を生きるアーティストが生み出す作品には新しいものの見方や生きるヒントがあると考えました。

これを反映して、企画展は現代アートを中心に構成。もちろん猪熊から寄贈された作品、写真、映像など約2万点も収蔵していて、常設展で見ることができます。

TOPに戻る

新たな手法に挑戦した猪熊作品を堪能

猪熊の作品は具象画で始まり、1955年にニューヨークに行ってから抽象画に、晩年は具象と抽象の枠を越えた独自のスタイルへ画風が変化します。今秋は常設展とともに企画展でも猪熊関連の展示が行われ、さらにその魅力に迫れます。

常設展ではモチーフを変形して描く「デフォルマシオン」の手法に着目。《黄色いスカートの婦人》は、上半身に比べて足元が小さく描かれていますが、画面のバランスを美しくするために変形させたもの。また、キュビズムを取り入れて猫や人を四角と丸で表現した作品もあり、具象画でありながら抽象画にも見え、いろんな表現を模索しているのがわかります。

企画展では、猪熊が東京美術学校で師事し、生涯の師と敬愛した藤島武二と共通して大切にしていた単純化の表現を紹介。藤島は「サンプリシテ」、猪熊は「シンプル」と呼び、描こうとする本質を表すために必要十分なところまでいかに単純化するかに取り組みました。

藤島の《大王岬に打ち寄せる怒涛》は岩と波の形を大きくとらえ、シンプルですが、色を重ねて色彩の複雑さが印象に残ります。猪熊の《ピンク・丸・角》は色も形も少ないけれど、そのバリエーションで大きなインパクトを与えています。同じ単純化の考えでもそれぞれ異なる表現を追求し、興味をかき立てられます。

DATA

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

住所/香川県丸亀市浜町80-1
TEL/0877-24-7755
開館時間/10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日/月曜日(祝日の場合は翌平日)、
12/25~31、臨時休館日
※社会情勢により臨時休館する場合がありますので、事前にご確認ください。
料金/企画展:展覧会ごとに異なります。HP等でご確認ください。
常設展:一般300円・大学生200円
※高校生以下無料
駐車場/なし(JR丸亀駅前地下駐車場2時間無料)

MAP

展覧会情報

常設展 「猪熊弦一郎展 デフォルマシオン」

2021年10月1日(金)~12月5日(日)
モチーフを変形して描く「デフォルマシオン」の手法を取り入れた、戦前から1955年の渡米までの作品を紹介。新しい絵画に挑戦したエネルギーを感じます。

猪熊弦一郎《猫と住む人》1952年
©公益財団法人ミモカ美術振興財団

企画展
「藤島武二と猪熊弦一郎展 サンプリシテとシンプル」

2021年10月1日(金)~12月5日(日)
猪熊弦一郎の生涯の師であり、日本近代洋画を牽引した藤島武二と猪熊弦一郎が重視した単純化。初期から晩年まで、それぞれが取り組んだ作品を楽しめます。

藤島武二《大王岬に打ち寄せる怒涛》1932年
三重県立美術館蔵

せとうち美術館ネットワーク
スタンプラリー実施中

2021年4月1日~2022年3月31日

本四高速道路が、瀬戸内の美術館・博物館と連携し、瀬戸内のアートの魅力を発信する「せとうち美術館ネットワーク」。右の冊子に参加している81の美術館・博物館を巡ると、スタンプの数に応じて抽選で図書カードや参加施設のオリジナルグッズがもらえます。
冊子は、ネットワーク施設と本四高速道路SA・PAで配布しています。
https://www.jb-honshi.co.jp/museum/

TOPに戻る