
貝焼きセット。大アサリは2等分され、ネギのせとバター風味で味わえる。サザエと大アサリは焼く前に貝用タレを少したらし、アワビは両面を焼くのがおいしく味わうコツ。
地元の漁師さんが持ってきてくれる活きのいい魚介を自分で焼いて味わえると聞いて向かったのは、鳴門の粟田漁港近くにある片山水産。鳴門スカイラインを経由し、釣り筏や牡蠣の養殖筏が浮かぶ風光明媚なウチノ海や、小鳴門海峡の激しい潮流を眺めながらのドライブだ。海沿いの道に出てしばらく走ると、あった!「磯焼」の看板だ。入り口の生け簀には、貝、車エビ、ハモ、タコなどいっぱいだ。
この店の磯焼は貝が中心で、お得な「貝焼きセット」はアワビ1個、サザエ2個、大アサリ2個でなんと2、200円。生け簀からあげたばかりのものを炭火でドーンと焼く。大アサリは身が詰まってプルプル、アワビは動いて網から落ちそうなほど活きがいい。熱々をほおばると旨みがジュワーっとあふれてくる。アワビ1個をかぶりつく贅沢なんてそう味わえない。口の中が潮の香りでいっぱいだ。海鮮丼や煮物もあり、おいしいに決まっている。だけど、それは次回の楽しみにして、食後は漁港巡りへ行くとしよう。
徳島市の市街地から四国東岸を貫く国道55号を南下する。海鮮ドライブのゴールは小松島にある恵比須丸だ。遠くに山並みが広がり、のどかな田園風景に夕闇が迫る中、恵比須丸は一目でわかった。大漁旗と漁具が灯りに照らされ、漁り火みたいだ。中に入ると所狭しと生け簀が並び、漁港の市場のようにいろんな種類の魚が泳いでいる。
この店を切り盛りするのは、徳島県南部の漁師一家に生まれ、兄弟は現役の漁師という立石富美男さん。〝活け〟にこだわり、毎日近海で獲れた魚介類を仕入れ、県南の漁港へも足を伸ばしている。昼間はこれらを直売しているが、夕方からは店の奥にあるカウンターで旨い料理を味わえるのだ。
食べたい魚や貝を言えば、生け簀からあげて刺身、焼物、煮物、天ぷらなどにしてもらえる。料金は量り計算だ。どこでどんな魚が獲れたかを把握してうまく仕入れているので安いし、旨い。「この大きさの伊勢エビの刺身なら2、520円。頭は後でみそ汁にするとおいしいよ」と教えてくれる。見事な手さばきで次々料理ができあがり、旨くて箸が止まらない。わざわざやってきて良かった。魚をこよなく愛する店主の飾らないもてなしにお腹も心も満たされた。