小豆島
香川県小豆郡
香川県小豆郡
瀬戸内海で淡路島に次いで大きい小豆島は、いにしえから人物交流の中心地として栄え、独自の文化を発展させてきました。特に、和食文化を支える醤油は、400年以上前の江戸時代から生産が始まりました。きっかけは、小豆島の石。
小豆島を形成する花崗岩は、大阪城築城の際に多く採石されました。その時に、紀州湯浅の醤油を石工が持ち込んだと言われています。その後、もともと盛んな製塩業や麹の発酵に適した温暖な気候などによって、醤づくりが一大産業となったのです。伝統技法は受け継がれ、小豆島町内海地区の「醤の郷」では、醤油の蔵などが軒を連ねて香ばしい匂いを漂わせています。
そして、こうした石や醤油など、島の暮らしや産業を支えた立役者といえば、島内外と商売したり原料を運搬したりする役を担った海運業でした。船だけが外海と島をつなぐ交通手段なのは今も変わらず、島の人たちにとって大切な存在です。
022年10月に、小豆島町の坂手港に発着するジャンボフェリー㈱が新造船「あおい」を就航させました。船内のデザインは、醤油と石、島を代表する文化的景観の棚田、オリーブをイメージしています。実際、島中央部の中山地区には、「日本の棚田100選」に選ばれている風情ある棚田風景が見られ、300年ほど前に始まった農村歌舞伎は今も伝承されています。また、小豆島は日本で初めて栽培に成功した国産オリーブ発祥の地であり、街路樹や民家の庭など、そこら中でオリーブの木が植えられています。
「あおい」の就航日には、坂手港で新しい船の誕生を祝うまつりが開催され、1200人ほどが集まったそうです。島の観光資源を紐解くと、歴史が浮き彫りになり、そこには島と切っても切れない関係にある船(海運)の存在が見えてくるのです。
島旅は船旅でもあると、私は思います。船から小豆島の景色を眺め、潮風に乗ってくる島の香りをぜひ感じてみてください。
旅作家・元編集者。著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など。2014年に広島(香川県)で島の有志と『島プロジェクト』を立ち上げ「ゲストハウスひるねこ」をオープン。2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。産経新聞などで連載中。2022年に本四高速のせとうちアンバサダーに就任。