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情報誌「瀬戸マーレ」

インタビュー「瀬戸内と私」 Setomare Special Interview 009 Kaoru Tamaoka

瀬戸内の海に思う日本の未来に希望を感じて

作家 玉岡かおるさん

恋愛小説でデビューした、作家の玉岡かおるさん。現在は、歴史小説を手がけて、ますますファンの心を掴んでいます。過去の時代に生きた、女性の主人公の生きざまが心を打つ作風で、代表作「をんな紋」や「天涯の船」のほか、話題の「お家さん」などを上梓してきました。

出身地である播磨にこだわって作品を展開してきた玉岡さんは、瀬戸内海の島へ旅する機会も多くあると話します。そんな玉岡さんにとって、旅の醍醐味は、そこに生きる人間の姿が見えること。「特に思い出に残っているのは、笠岡諸島の北木島での『流し雛』です。紙雛にけがれや悩み、病気を託して流すんですね。そこに生きる人の、幸せになろうという願いが込められた風習なんだと実感しました」。
さらに、「島に暮らす人々は、天気や潮の速さなど、人間の力ではどうにもならない『自然』の力を知った上で、これと向き合いながら謙虚に生きる、日本人ならではの知恵を持っているのでは」と感じています。

お子さんが小さかった頃には、プレジャーボートで島へ行く機会も多かったという玉岡さんですが、4年前に行われた「ひょうご県民交流の船」の日中友好船で、4日かけて中国へ渡船した際には、「瀬戸内海の橋の下を通るたびに、『昔の遣唐使の人たちに、今、この橋を見せてあげたい!』と強く思いましたね。彼らは、最新の技術を得るために命がけの旅をしたわけですが、今は日本が、最先端の技術を世界に発しているのですから」と、笑顔に。

現代は、西洋文明を取り入れてきた日本が、思考の転換をしているときだと考える玉岡さん。新しいものを取り入れつつ、古くからあるものも大切にするのが日本人のいい点だとも。「近代技術の総結集ともいえる明石海峡大橋を渡ると、視界が開けて、心が洗われ、海を美しいと感じます。都市に住む人間が、自然の大きさを感じる、それだけでも視点のチェンジになる。そこから問題意識を投げかけられているのでは、と日々思っています」。

玉岡さんが現在、心惹かれているのは「明治」という時代だそう。秋には、明治の建築家ヴォーリズの夫人・一柳満喜子をモデルにした新刊が発行されます。題して「負けんとき」。東日本大震災からの復興とまちづくりへの想いも込めた意欲作です。

PROFILE 作家 玉岡かおるさん

玉岡 かおる

兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学卒業。1989年神戸文学賞受賞作「夢食い魚のブルー・グッドバイ」でデビュー。代表作は、播磨に生きる女三代を描く「をんな紋」(角川書店)、「天涯の船」(新潮社)など。話題作「お家さん」で第25回織田作之助賞受賞。執筆のかたわら「スーパーニュース・アンカー」(関西テレビ・月曜)のコメンテーターや、「玉岡かおるの神仏融合 巡拝の旅」(ラジオ関西)のパーソナリティーとして多方面で活躍。いなみ野ため池ミュージアム運営協議会会長で、兵庫県環境にやさしい事業者賞、団体の部受賞。

「お家さん」(新潮社)は、2012年2月に舞台化の予定。神戸の小さな洋糖輸入商から始まり、大正から昭和の初め、日本一の年商でその名を世界に誇った鈴木商店のトップ、鈴木よねを主人公に、伝説の女性とその周囲を描く感動大河小説。 新刊「負けんとき」は2011年10月に発刊予定。

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