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情報誌「瀬戸マーレ」

粟島で人の心に触れる旅

透き通る海に囲まれたあったか人情の島

海に浮かぶ3つの島が、砂洲でつながり出来たという粟島。
豊かな自然と心温かな人々、それ以外は何もないのが良い所だと、訪れた人は口々に言う。
静かに打ち寄せる波に似て、流れる空気もどこか穏やかだ。
故郷に帰ったような、忘れていた何かを思い出させてくれる、
癒しのひとときを過ごしに行こう。

のんびり過ごす島時間

粟島港に降り立った。乗ってきた船が去ったあとは、穏やかな波の音が聞こえるのみ。「何もない島」、そんなフレーズが頭をめぐる。海と山と風に、鳥の声。人の姿はまばらで、道行く人がみな笑顔で挨拶を交わしてくれるのにホッとする。

路地に入ると、昔懐かしいような、古い家屋が並んでいた。かつて、粟島では瓦の製造が盛んだったという。その名残なのだろう、ユニークなデザインの鬼瓦を幾つも見つけた。波の形や、鶴亀など、風情があって興味をそそられる。

レンタサイクルを見つけたので、自転車に乗って、東の山へ向かってみた。山の中腹から海を眺めると、打ち寄せる波が、透き通ったブルーに光って美しい。小さな浜に降りてみたり、彩り鮮やかな花が添えられたお地蔵さんを眺めたり。畑に向かうのだろうか、籠を手にした島の女性のモンペ姿が郷愁を誘う。

やがて上新田港へたどり着いた。港の近くに見つけたのは、色鮮やかな花畑「ブイブイガーデン」。魚網で使う「ブイ」で作られた人形があちこちに並んでいる。お地蔵さんに、浦島太郎と乙姫さま、笑顔はじける少年少女など、見ているとこちらも微笑んでしまう。

手がけているのは、島の人気者「えっちゃん」こと松田悦子さんだ。季節の花やハーブが愛らしい畑では、花の色を想定して種が蒔かれている。「この島で、自分も職業もゼロにしてみ。何かいいものをつかんで帰れるから」と、えっちゃん。ヤギのハナコが草を食み、ミツバチがブンブンと羽音を鳴らして飛びまわっている。そうだ、慌ただしい日常から離れてきたのだから、のんびりと島時間を楽しむとしよう。

粟島港から西へすぐ、レンタサイクル500円
粟島港から西へすぐ、レンタサイクル500円

ブイブイガーデンには、ブイ人形も
ブイブイガーデンには、ブイ人形も。古い家屋では、かつてタバコの乾燥室だった一角を、松田さんの個人ギャラリーにしている

足を延ばして志々島へ

隣の志々島に、「大楠」という評判の大木があると聞き、船で渡ってみた。港から、「山道を登り下りで15分ってとこかな」と島の人に教えてもらう。木々の生い茂る道を登って下り、茂みを抜けると、樹齢千年の「大楠」が、突如目の前に現れた。息をのむ。上へ横へと枝を今も伸ばして、見る者を圧倒している。素晴らしい。

(写真右)志々島の大楠は、幹周り14m、高さ40mで、香川県の天然記念物に指定されている。志々島へ渡るなら、船の便数に注意。
粟島で一泊する方がベター

志々島の大楠は、幹周り14m、高さ40mで、香川県の天然記念物に指定されている
アクセス

三豊鳥坂ICから約20分、さぬき豊中ICから約25分で須田港。 須田港から粟島港まで15分、片道320円、1日8便。
粟島港から上新田港へは15分、160円、1日3便。 上新田港から志々島へは15分、160円、1日3便。
●粟島汽船(株)/0875(83)3204 問い合わせ/三豊市地域振興課 0875(73)3013

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おふくろの味、島ごはん

粟島の上新田港に近い民宿「ぎんなん」では、一日一組限定で、島の味を食べさせてくれる。
新鮮な島採れ野菜に、今朝捕れたばかりの魚など、心づくしの品ばかりだ。
名物・粟島の茶がゆも外せない。
島の空気もたっぷり含んだ、懐かしいおふくろの味に舌鼓を打つ、ゆるやかな時間。

懐かしい味のオンパレード

箸を運んで口に入れた途端、磯の香りがまろやかに湧き立った。シャキッとしたヒジキに甘いニンジン…おお、これは、いつか食べたことのある懐かしい味ではないか。

民宿「ぎんなん」のお客は、一日一組限定。ここの食事は、島に来る楽しみの一つだった。島で採れた野菜を中心に、おふくろの味をたっぷり堪能できるというのだから、訪れない手はナイ。

この日いただいたのは、煮物が3種でヒジキのほか、豆に、高野豆腐とカボチャ。味噌和えはワカメとマテ貝、他にコノシロの酢の物、タコのサラダも加わる。
「魚が捕れたときは、それもプラスよ」と、女将の宮崎由美子さん。捕れた日のみ、というのが、のんびりとした島ならでは。

運ばれてきた「キスの黄砂炒め」は、ハーブを絡めてフライにしてある。続いては、なんと、アコウの煮付けに、タイの塩焼きと、今日は大漁の日だったようだ。やったゼ。

女将の宮崎由美子さん
女将の宮崎由美子さん。心を込めて作られた料理の品々は、ほとんどが島でとれた食材による

(写真左)ヒジキの煮物(写真右)アコウの煮つけは、夜ごはんのメニュー
(写真左)ヒジキの煮物。目前の海の岩から採ってきて、干したヒジキ(写真右)アコウの煮つけは、夜ごはんのメニュー

海を見ながらほっこり気分

ここでもう一つ、忘れてはならないのが粟島の名物、茶がゆだ。香ばしくほんのり甘い香りは、波布茶から漂ってくるもの。「茶がゆも、家庭によって味が様々でね。作り方も、少しずつ違っているのよ」と由美子さん。元来、粟島の茶がゆは、高知の碁石茶を使うらしいが、「ぎんなん」では、島で作った波布茶を用いているそうだ。これ、数が少なく貴重らしい。何はともあれ、湯気の立つあったかいうちに、サラサラとかき込んだ。

「ぎんなん」では、ブイブイガーデンのえっちゃんも、料理を手伝っている。「島の空気も一緒に食べて」と言われ、窓の外に広がる、穏やかな海を眺めながらの一杯。
宿を出るとすぐそこに砂浜があるのだ。海水浴もいいけれど、爽やかな潮風に吹かれながら、ゆったりとくつろぎたい。

ここで昼寝もいいな、などと思っていると、食後のお茶に、波布茶と、インドのトゥルシー茶を淹れてもらった。これも島で作ったという。
優雅な気分、この上なし。

「何もない粟島を、自然が楽しめるからと、好んで来てくれる人も多くて」と話す、由美子さんとえっちゃん。何もないとは言うものの、島の人と立ち話をしたり、挨拶をかわしたりできることも、この島の魅力だろう。「そうやって心を動かしてくれたら嬉しいねえ」と、お二人の笑う声が響いた。

しばし心を開放して、この島の心地よさに酔いしれよう。

(写真左)粟島の波布茶(写真右)窓の外でティータイムを
(写真左)粟島の波布茶。アイスでいただくと、コーヒーのような香ばしさが(写真右)窓の外でティータイムを。この日はトゥルシー茶も

由美子さん(左)とえっちゃんの明るさも魅力
由美子さん(左)とえっちゃん(右)の明るさも魅力
民宿「ぎんなん」

TEL/0875(84)6377 ※1日1組限定、5名様まで。
1泊2食付きで大人8,000円、小人(小学生まで)5,000円。宿泊客の予約がなければ昼ご飯も可能で1,500円(1人)。
1週間前までに要予約

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海ホタルの幻想ショー

夜の浜辺に浮かびあがる、幻想的な青い光。
海ホタルの発するきらめきが、島への旅心をかき立ててくれた。
何かが待っている、そんな心躍る気分になったのは、久しぶりのことかもしれない。

浜辺に光る海ホタルを鑑賞

夏の粟島でぜひ見たいのが、海の宝石「海ホタル」だ。浜辺で繰り広げられる幻想的な光を、ぜひともこの目で確かめたい。それにしても、海ホタルとは一体何なのか。

「プランクトンである夜光虫とは違って、海ホタルは甲殻類。よく見ると、二枚貝になってるよ」と教えてくれたのは、通称「海ホタルおじさん」こと西山恵司さんだ。ラッキーな出会いに喜んで、ぜひ海ホタルのショーを見せてほしいとお願いした。

海ホタルは、日本全国の太平洋沿岸と瀬戸内海に生息し、体長わずか3ミリ前後。5月から10月くらいまでの間、活発に活動している。夜行性で、月齢に支配されているとか。折りしも時は満月。月明かりのない新月が一番だが、大潮となる満月の前後も悪くないらしい。

というのも、海ホタルを「捕獲」して初めて、このショーを見ることができるのだ。日が沈み、辺りが暗くなった頃、近くの浜辺へ足を運ぶ。波打ち際に、海ホタルがざあっと撒き散らされ、いっせいに青く光り出した。うわあ!と歓声が上がる。寄せて返す波の中で、夢のような美しさ。讃岐の伝説・浦島太郎もこれを見たのかもしれない。

青白く光る、海ホタル
青白く光る、海ホタル。浜辺に仕掛けられたショーは、島の人たちの努力の賜物
※海ホタル観賞シーズンは5~10月。天候によっては見られないこともあり

「海ホタルおじさん」こと西山恵司さん
「海ホタルおじさん」こと西山恵司さん。粟島イベント実行委員会の会長も務めている、パワフルで親切な人柄

西浜の夕陽に誘われて

海ホタルショーが始まる時間まで、西山さんと西浜海岸へ赴いた。1㎞ほどの白い砂浜が広がり、遠く沖では、南航路と北航路の船が行き交っているのが見え、瀬戸内の島での旅情を盛り上げてくれる。夕陽が沈みゆくのを静かに待つ、心豊かなひとときだ。

「この島で、自分に合った何かを見つけるといい」と西山さん。何もないところから探し出す、ということだそう。なるほど、絵も描くという西山さん、アーティストらしい言葉である。そこで見つけたのは、人との触れ合いの温かさ。そんな平凡な発見が、これほど心を潤してくれるとは。この旅で出会った全ての人々に感謝したい。

西浜の夕陽
西浜の夕陽。瀬戸内海らしい島と海のコントラストも美しい。シーズンには海水浴場に

みどころ

●ル・ポール粟島

粟島港すぐの粟島海洋記念公園の敷地内にある宿泊施設で、テニスコートや多目的広場、武道場も併設。1泊2食付きで、洋室ツイン1人8,000円~。ボリュームたっぷりの夕食は、島の魚を用いた季節の会席料理。時季によりメニューは異なる。海ホタルショープランほか、お得なプランの詳細はWebまたは問い合わせを。
施設内にあるキャビンはファミリーに人気。キャビンではペットも宿泊可。1室5名まで、室料10,000円(食事別料金)。5月~10月まで、宿泊付きバーベキュープラン(朝食付き。4人以上)大人6,000円、小人4,800円もあり。


TEL/0875(84)7878 URL/http://www.le-port.jp/

施設内にあるキャビンはファミリーに人気
施設内にあるキャビンはファミリーに人気
外観   室内   料理イメージ
●粟島海洋記念館

明治30年に開校した、日本最古の海員養成学校跡地。ミントグリーンの壁の建物は島のシンボルになっている。海員学校時代の歴史資料や船舶模型などを展示。入館無料

開館時間/午前9時~午後4時
休み/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始



粟島海洋記念館
●西浜海水浴場

粟島港から歩いて15分ほどの海水浴場。1kmに及ぶ白砂の砂浜が広がっている。西風のため、流木などの漂着物も多く、ビーチコーミングにも適している。海に向かって、右手に阿島山、左手に城ノ山を望む景色も抜群。




西浜海水浴場
●シーボーンアートづくり

ビーチコーミングで集めた、貝や流木、ガラスを用いて、スタンドや写真立てなどのオブジェを作る、シーボーンアート。砂浜で素材を拾うことから始めるので、所要時間は1~3時間程度。
「ル・ポール粟島」(上記参照)にて受付。






シーボーンアートづくり
●レンタサイクル

粟島港から西へ3分の無人レンタサイクル。
1日500円





レンタサイクル
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