
養殖場から水揚げされる真鯛。
宇和島市にあるイヨスイ株式会社は1991年に創業し、真鯛をはじめとする魚の養殖から加工、流通、販路開拓まで一貫して行う水産会社です。もともと活魚運搬船による海上輸送業を営み、瀬戸大橋の開通前から養殖産業に携わっていました。荻原達也社長は養殖産業の変遷を振り返ります。
「愛媛で真鯛の養殖が本格化したのは1960年代半ばのことです。昔は水揚げした魚は野締めといって氷詰めして締め、鮮魚で市場まで運んでいました。その後、活魚(生きたまま)での輸送が始まり、どんどん需要が高まり、そのタイミングで瀬戸大橋が開通しました」
活魚運搬船での海上輸送は、京阪神や首都圏の市場に着くまで2日かかっていました。高速道路ネットワークを利用して活魚運搬車で輸送すると、朝出荷してその日のうちに到着します。
「瀬戸大橋の開通で輸送時間が1日短縮し、それまで鮮魚を市場に届けるだけだったのがいろいろな売り方ができるようになりました。消費地に活魚水槽や加工場が作られ、活魚やフィレなどに加工して提供できるようになり、お客様も養殖魚の使い方を考え、販売量が増加しました」
流通も変化しました。従来は市場でせりにかけられ、仲卸、買参人を通して小売店や飲食店に販売されていました。
「現在は量販店や外食チェーンなどと直接取引する市場外流通が主流です。量販店や外食チェーンには、年間を通じて優れた味と品質、安定した量の真鯛の確保が必要です。それができるのが養殖真鯛で、ニーズにあった規格と量、価格を決めた契約販売が増えています」
特に最近は、鮮度の高い魚を気軽に味わいたいという消費者志向を受け、活魚やフィレなどの加工品を中心に出荷されています。
「活(い)かり気(け)と呼ばれるコリコリした刺身の食感は、活きのいい真鯛を締めなければ味わえません。弊社では関西は岸和田市、首都圏は成田市に活魚水槽を備え、輸送後に泳がせてストレスを抜いてからその日に消費する量を締めて加工し、提供しています」
日本の水産物は海外でも評価が高く、イヨスイも国内と同様に鮮度にこだわり、積極的に輸出を展開しています。
「現在は瀬戸大橋だけでなく神戸淡路鳴門自動車道も利用しています。非常に便利で、販路が拡大し、市場も広がりました。これからもおいしい愛媛の養殖真鯛を全国へ、世界へ届けていきます」
住所/愛媛県宇和島市住吉町3-1-8 TEL/0895-24-5665