困った。神戸に住む娘夫婦から、孫娘を預かることになったのだ。私の妻も旅行中。それなら私が孫を独占できる!この機会に、徳島の良さを教えてあげよう、と意気込んではみたものの、さて小学生の子どもをどこへ連れて行こう?
娘から「ウチの姫をよろしくね」と言われて思いついた。そうだ、あそこだ。
車に乗せて着いたところは、鳴門市役所にほど近い「グリムメルヘンプロムナード」。川辺りの道が、実にファンタジックな光景なのだ。
撫養川親水公園の一環であるこの遊歩道には、グリム童話をモチーフにした石造りの立体壁画が連なっている。物語のシーンの再現に、絵本の好きな孫娘は、「赤ずきんちゃんだ!」と叫ぶと、スキップしながら水辺の道を駆けていった。
よしよし。他にも白雪姫にヘンゼルとグレーテルなど、よく知っている話の壁画があるんだと、楽しそうだ。
「グリムってどこ?」と尋ねられ、「人の名前だよ。ドイツ人のグリムという兄弟が書いたんだ。ヨーロッパのドイツ」。ゆっくり話すと、ふうん、と神妙な顔で頷いている。鳴門市はドイツ北部のリューネブルクと姉妹都市である、とまでは説明しなかったが。そう、徳島とドイツには深い絆があるのだ。
- 石畳約230メートルの遊歩道。グリム童話の一場面が再現されている壁画は、白雪姫など6つが並ぶ