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高松藩のお膝元で風雅な秋のお菓子めぐり

高松藩のお膝元で風雅な秋のお菓子めぐり

高松には歴代の高松藩主が100年の歳月にわたり手塩にかけてつくった 回遊式大名庭園の栗林公園と茶文化が息づいている。
特別名勝に指定される栗林公園は6つの池と13の築山からなり、 変化に富んだ壮麗な眺めを楽しませてくれる。とりわけ紅葉が色づく秋は圧巻の華やかさ。
抹茶とお菓子をいただきながらお殿様気分で優雅なひとときを過ごそう。

穏やかな瀬戸内の海を滑るように進む

車が行き交う国道11号から一歩入っただけで、さっきまでの喧噪が嘘のような別世界が広がる。栗林公園は、寛永年間に当時の讃岐国領主・生駒高俊によって南湖一帯が造園され、その後、水戸光圀の兄で初代高松藩藩主・松平頼重によって本格的に造園が進められ、以降も歴代藩主が修築を重ねて完成された。

園内は「一歩一景」とたたえられるほど趣の異なる景色が次々と現れ、ため息の連続だ。丹念に手入れされた松。江戸初期の大名茶室を伝える旧日暮亭。芙蓉峰からの眺めは、北湖の先でなだらかな曲線を描く紫雲山が庭園と一体化し、絵のような美しさだ。その北湖は、大水や日照りで生活に困った領民を助けるため、二代目頼常が領民を雇って造らせたものだとか。そんなエピソードがあるのもほほえましい。

しかし秋はなんといっても紅葉だ。南湖周辺では赤や黄に染まった葉が幾重にも重なり、湖面に映りこんでひときわ艶やか。紅葉シーズンは夜間ライトアップが行われ、昼間とは違う幻想的な雰囲気にうっとり。そんな絶景を歴代のお殿様は湖畔の掬月亭でお茶や宴を楽しみ、舟遊びに興じながら愛でたとか。今も当時と同じように掬月亭でお茶やお菓子をいただき、南湖を舟で巡ることができる。歴史絵巻の主人公になった気分で雅やかな世界に浸れるなんて贅沢だな。

紅葉と緑のコントラストが鮮やか。11月21日~30日(予定)は、夜間ライトアップ(17:00~21:00、入園は20:30まで)にあわせて、和船の就航が昼間だけでなく夜間も行われる(乗船料/大人610円、小人300円)。 
船頭さんの解説を聞きながら水上から眺める庭園も趣たっぷり。
お茶や宴を楽しむため、南湖に突き出すように建てられた数寄屋造りが美しい掬月亭。水に映った月を掬うという詩にちなんでその名がつけられた。
【DATA】掬月亭

掬月亭では美しい自然美を眺めながら、季節のお菓子とお抹茶をいただける。
料金/お抹茶(菓子付)大人700円 ※和船の乗船券を提示すれば500円に。営業時間/9:00~16:30 定休日/12月30日・31日

【DATA】特別名勝 栗林公園

園内には、香川県産品のアンテナショップ栗林庵や讃岐民芸館などもある。
住所/香川県高松市栗林町1-20-16 TEL/087-833-7411(香川県栗林公園観光事務所)営業時間/10月6:00~17:30、11月6:30~17:00、12月7:00~17:00(季節によって変動)。紅葉シーズン中は夜間ライトアップあり 定休日/年中無休 料金/高校生以上410円、小学生・中学生170円  ※元旦と開園記念日(3月16日)は無料開放

【商工奨励館 ガーデンカフェ栗林】

商工奨励館のリニューアルオープンに伴い、西館におしゃれな「ガーデンカフェ栗林」が誕生。明治32年築の趣きある建物を楽しみながら瀬戸内の食材を味わえる。本館では香川県内の特産物の展示即売や製作実演が行われる。
ガーデンカフェ栗林のスイーツは讃岐和三盆や旬のフルーツなど地元の食材を使用。心までとろけそう。 上:讃岐和三盆の濃厚プディング ガーデンカフェ栗林風 カラメルソース添え 下:讃岐産旬のフルーツと希少糖入りマチェドニア
営業時間/10:00~16:00(特別イベント期間中はイベント時間に準じる)
TEL/087-813-0870  定休日/月曜日(祝日の場合は翌日、特別イベント期間中は営業)

こんな楽しみも

早起きをして朝粥をいただこう

【花園亭】

北湖の近くにある花園亭では、早朝の庭園を散策がてら朝粥をいただける。別室が用意され、静寂漂う北湖越しの庭園を眺めながら味わうのは格別。ランチメニューでは、うどんがついた松花堂弁当などがあり、喫茶や土産物の販売も行っている。
朝粥 利用時間/7:00~10:00、料金/1,300円~ (要予約、入園料は別途必要)、Tel/087-831-5255

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丹精込めてつくられた和菓子の「美」「味」にぞっこん

高松藩主の命によって生まれた讃岐伝統の和三盆をはじめ、 高松には由緒ある和菓子や季節感あふれる和菓子がいっぱい。
美しくて、おいしい和菓子は、目と舌に幸せを運んできてくれる。

海上交易で築いた莫大な富を誇っていた

明治維新後に高松藩士の仲間3人が始めた菓子処があると聞き、高松片原町西部商店街に向かった。その名も3人の友から名付けられた三友堂。歴史を感じさせる店内には、千利休ゆかりの赤楽茶碗「木守」にちなんで昭和初期に考案されたという銘菓「木守」が並んでいる。柿羊羹を麩焼せんべいではさみ、和三盆を塗ったもので、さらりとした甘みとしっとりとした口当たりがやさしい。

「『木守』に秘められた歴史ロマンも一緒に楽しんでください」と4代目店主の大内泰雄さん。

素朴なロールカステラや、かわいい餅菓子、季節感あふれる生菓子もあり、選ぶのに迷ってしまう。特に菊の花や紅葉をかたどった練り切りは職人の手仕事ならではの美しさで、食べるのがもったいないほど。練り切りは白あんに山芋を混ぜたきんとんにお餅や水飴を入れてつくるそうで、店やつくる形によって配合が異なり、それが繊細な味や口溶けに影響するとか。気に入った和菓子に出会うとときめいてしまう。心の贅沢ってこういうことかもしれない。

萩団子(ういろ)
照り葉(煉り切り)
梢の錦
うさぎ(じょうよ)
柿(雪平餅)
菊(煉り切り)
松茸(じょうよ)
いちょう
銘菓「木守」 1個152円(税込)
千利休がこよなく愛した赤楽茶碗「木守」は、やがて高松藩松平家に献上されたが、関東大震災で壊れてしまう。そのかけらを入れて復元されたことに感銘して、茶人でもあった2代目店主が考案。製法はほぼ当時のままで、表面に茶碗「木守」の高台を模した渦巻きが焼き印されているのが心憎い。なお赤楽茶碗は、高松藩の茶道指南役だった武者小路千家の家元襲名など重要な茶会の際に瀬戸大橋を渡って京都に運ばれるそうだ。
【DATA】 三友堂
住所/香川県高松市片原町1-22
TEL/087-851-2258
営業時間/8:30~19:00
定休日/元旦のみ

極上の和三盆と木型を使って干菓子作りに挑戦

和菓子の甘味の決め手となる特上の讃岐和三盆糖。その和三盆を花鳥風月などをかたどった木型に詰めてつくる干菓子は、愛らしくて芸術作品のよう。この干菓子作りを体験できる教室が豆花だ。

笑顔で出迎えてくれたのは、上原あゆみさん。実は上原さんのお父さんは全国でも数人、四国では一人しかいない菓子木型職人・市原吉博さんで、菓子木型の素晴らしさを広めたいと豆花を始めたのだとか。

さっそく干菓子づくりに挑戦だ。工程はシンプルで、思いのほか簡単にできた。作りたてを口に放り込むとほろほろと溶け、まろやかな甘みが広がり、普段味わう干菓子よりやさしい気がする。これははまりそうだ。目の前で友だちにつくってもてなしたくなる。伝統に培われた菓子文化に触れることができ、舌だけでなく目と心も豊かになった。

市原さん作の木型がいろいろ用意され、好きなものを選んで作れる。
繊細な形とパステルカラーの優しい色にほれぼれ。2色でつくった干菓子(右下)も素敵。

伝統の技を現代にも輝かせる菓子木型づくり40年を超える市原吉博さんの工房には、四季折々の季節をかたどった木型から動物やキャラクターものまでバラエティ豊かな木型がずらり。「現代の名工」に選ばれる職人さんだから気難しいのではと思ったらその真逆。ユーモアにあふれ、自らを「NOと言えないアーティスト」と呼び、どんな木型づくりにも応じるとか。観光庁の依頼で免税品をPRするポスターのためにつくった口紅やかばんなどの木型も斬新で、伝統にとらわれずにつくり続ける姿に感動してしまった。

親子で体験する人も多い。自分でつくった干菓子を食べ、「おいしい」とにっこり。

【和三盆体験(要予約)】

体験料/1,000円、所要時間/約1時間

【DATA】豆花

住所/香川県高松市花園町1-9-13
TEL/087-831-3712  営業時間/10:00~17:00  定休日/木曜日

こんな楽しみも

人気の栗菓子から季節の
和菓子まで種類豊富

色とりどりの和菓子にひかれて入ったのは、JR高松駅からすぐの場所にある湊屋。彩り鮮やかな季節の生菓子(1個160円)は毎月入れ替わり、出会いの楽しさを味わわせてくれる。店を代表する栗まんじゅう「栗林のくり」は、かつて栗林公園に多くあった栗の木にちなんでつくられたものでファンが多い。

【DATA】御菓子処 湊屋

住所/香川県高松市寿町1-1-3
TEL/087-821-8634
営業時間/9:00~18:30(日曜日は18:00まで)
定休日/元旦のみ

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