標高452.6mの神峰山から望む大パノラマ。
しまなみ海道ととびしま海道の間にあり、橋でつながっていない大崎上島。船でしか行けないこの島には穏やかな時間が流れ、見たこともない絶景と素敵な出会いが待っていた。
島に降り立ち、目に飛び込んできたのは大小無数の島々。このあたりは瀬戸内海で島が一番集まっているところ。島南部にある神峰山からはその姿を一望でき、緑の絵の具がはじけ飛んだように数え切れないぐらい島が浮かんでいる。その数なんと115。これほど多くの島を一望できるのは日本でここだけだという。奥に見えるのは来島海峡大橋。3連吊り橋を真横から眺められる場所があるなんて知らなかった。反対側に目を移せば煙突が立つ鉛色の不思議な島がある。もうひとつの軍艦島と呼ばれる、島がまるごと精錬所になっている契島だ。見る方向によって景色が違い、ずっと眺めていても飽きない。雨上がりだからか、その美しさは神々しさすらある。まばゆく輝く晴れの日も、夕日が沈むロマンティックな黄昏時も、この景色に浸っていたい。そんな魅力が大崎上島にはある。
木江は、かつて潮待ち・風待ちの港としてたくさんの船が立ち寄り、にぎわったところ。その岬の突端にあるのが、眺望抜群のきのえ温泉ホテル清風館だ。全室オーシャンビューで、とりわけDeluxe Room「陽光」は額縁のような大きな窓があり、絵のように美しい多島美が広がっている。ヒノキや漆喰など天然材を使った温もりのある部屋には日差しが降り注ぎ、テラスに出ると波の音が聞こえ、心が和む。ただぼんやり景色を眺めたり、読書をしたり、この上ない贅沢だ。疲れを癒やすなら、部屋でシャワーを浴びるより温泉につかりたい。露天風呂は開放感いっぱいで、潮風が心地いい。
夜は星が輝き、月明かりに照らされる海がなんとも幻想的だ。明日はホテルで超小型モビリティを借りてのんびり島内を散策しよう。かわいいフォルムがこの島によく似合う。
住所/広島県豊田郡大崎上島町沖浦1900
電話番号/0846-62-0555
CI/15:30~18:30 CO/10:00
8月13日 東野地区 櫂伝馬競漕、花火など
8月14日 大串地区 サマーフェスティバル、花火など
超小型モビリティは島一周らくらく、神峰山も登れる。運転免許を持って出発。この島はかつて造船で栄えたまち。海沿いには造船所があり、船づくりの伝統を継承する櫂伝馬競漕が行われている。木江には栄華を誇った町並みの面影が残り、狭い通りに2階建、3階建の木造建物が並んでいる。2階の窓に手すりがあるのが珍しい。少し離れて接待用の料亭としてつくられた日本唯一の5階建の木造建物もあり、当時がしのばれる。
島の北部にまわり、岡本醤油醸造場に立ち寄った。80数年続く島内唯一の醤油蔵で、地元産の大豆、小麦、塩を使い、昔ながらの木桶仕込みを行っている。「自然の風土を生かし、微生物を利用してつくるんです。ほら、菌がいっぱい飛んでるのが見えるでしょ」と、ご主人が麹や熟成中の木桶を見せてくれる。自然と対話し、じっくり丁寧につくった醤油はまろやかでうまみが広がる。自然の素晴らしさと、自然に生かされている喜びを大崎上島はあらためて感じさせてくれた。
住所/広島県豊田郡大崎上島町東野2577
電話番号/0846-65-2041
営業時間/9:00~16:00
定休日/日曜日・祝日 ※蔵見学は事前の予約が必要
瀬戸内しまなみ海道を経由して大崎上島に行くなら大浜PAへ。