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せとうち美術館紀行 第4回 今治市玉川近代美術館

今治市玉川近代美術館 世界の美術館を楽しもう!

今治市玉川近代美術館に関しての対談2

松本竣介作品を中心とした、近代美術の収集がコンセプト
ワークショップなどの新しい取り組みも

井上:
こちらの美術館の特徴、うちは他と違ってここが素晴らしいんです、というようなことを教えていただけますか。

白石:
さきほども少し申し上げましたけれど、当館ではコンセプトがはっきりとしております。ですので、ずれる・ずれないというのは主観的な面もありますが、この、『松本竣介という画家を中心にして、それで作品を固めたい』、というのがずっとあります。
そのほか、著名な作家としても、例えばアカデミックな作家さんたちというのも、彼が直に刺激、影響を受けた作家のものを集めています。有名だからこれ、賞をもらっているから集めようとか、そういうのは全然ないですね。だから、そのコンセプトに外れないように、というのでやってきたつもりなんですが、これも最近ではちょっと古いかな、などという気もしてきまして(笑)、もっと色々なものを集めた方が楽しいのかしら、とか、思ったりもするんですけれど。企画展など、本館と離れた、隣接した館でやるときなどには、こだわりを捨てて、色々な作家展をやろうと思っています。

井上:
先ほどお話を伺った、ワークショップなどで、コンセプトを生かせないんでしょうか。

白石:
それがなかなか難しいんですね。ただ、ワークショップでは自由にできました。例えば、ここは自然がいっぱいの環境ですので、川からちょっと変わった小石を拾ってきてもらったりとか、枝を取ってきてもらったりして、アクリル絵の具で自分の好きなように作ってもらうなど、なんにも関係なく行っています。誰かにあげたいものを一つだけ作ってください、と言って、プレゼント用のものを作ってもらいました。それで、館の玄関のところにずらっと並べて屋外展示をしたことがあります。植木にわざわざ貼ったりとか、そのときは子どもたちも喜んでいました。
講師の先生方も、愛媛大学(あいだい)の先生をおよびして、アクリル絵の具の使い方など、技能的なことも少し教えていただいたりしました。

井上:
一日がかりでしょうか。

白石:
そうですね。だいたい、一日かかりました。夏休み期間中に、1、2度、玉川町時代(現在は合併して今治市)に行っただけで。

井上:
やはり何かをするときは、予算もそうですけど、人手がいりますよね。

白石:
そうなんです。誰かサポーターのような人がいないと、子どもたちを集めるとなると、安全面とかいろいろなことがありますので、(継続して行うのが)難しい面があります。

井上:
私も、地元の茅ヶ崎の美術館の事例などを見ていますと、NPO団体で、地元の町興しやアート活動の子共支援をしている人々だとか一緒に行い、コラボレーションや、ある程度お任せしたりと、さまざまな形態で、近隣の子どもたちを集めるとか、あとは愛大の話が出ましたが、学生の若い力を借りて、彼らは子どもたちと年齢も近いので言葉が通じる(笑)、ノリが一緒、ということがあったりして、逆に教育学部の学生などには彼らにとっても学びであったりしているようです。
  また、こちら合併した今治市の複数の美術館さんと、何か共同で、もしくは持ち回りでするということも考えられますよね。

白石:
ええ。合併した当時、『共同企画展』というのを行いました。それはそれぞれジャンルも違うし、難しい点もありましたが、テーマを決めて行いました。

井上:
なるほど。思うのですが、美術館に来てもらう、というのが、まずハードルが高いんですね。こちらに限ったことではなく、おそらく今、全国共通だと思いますが、どうしても美術館には敷居が高いイメージがあったりしますしね。でも、プラスのイメージとしては、くつろげる、とか、癒される、自分を取り戻せる、などという部分もあります。そこをアピールしていけば、と。
こちらの素晴らしさは、やはり大自然の中にある!ということもあるのではと。さきほど、私、白鷺を見て感動してたんですが。

白石:
ええ、色々な鳥が来ますよ。鳥だけでなく、冬になるとタヌキが走っていますし。

井上:
川もありますね。

白石:
館のすぐ横に川もありますから、その横の細い道でタヌキを見ます。蛇が脱皮していたり。まだまだ自然がいっぱいの環境で、これはもう、どちらからいらした方にも誉めていただいてます。

井上:
それを作家たちは、どんなふうにその時代に見た自然を表現したのか、現代の私たちがこうやって自然を見てどう表したのか。何か共通するところがあるのでしょうね。

白石:
違いもありますでしょうし。

井上:
昔と違って、今の子どもの方が、虫を見ただけで喜んだり騒いだりもしますしね

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