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「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 広島県・平山郁夫美術館 写真

広島市 宮原さん (女性)

2016年7月24日

「橋を渡って親子でアート鑑賞」。娘が小学校で配布された一枚の広告。母親である私の手が止まった。バスツアーがワンコインで、しかも親子で一緒に行ける。行き先は広島を代表する平山郁夫美術館。早速、娘に聞いてみた。しかしながら返事は「行かない」。娘にはただ絵を眺めるだけの行程は魅力がないようだ。

しかし、ここで母は策を練る。娘はただ、なんとなくで言っているに過ぎない。本当の価値は大人が教えるものである。母の案は娘のお友達を誘う事だった。それを伝えると、いとも簡単に進んだ。「行く」。娘の中で、途端に白黒のイメージがカラフルに彩られた。

その日は快晴。外界はいかばかりに暑いであろう中、空調の効いたバスは快走した。

瀬戸内らしい緑の木々のトンネルを抜け、白く青空にそびえる橋を渡ると、本当にあっという間に美術館へ着いた。この景色が平山郁夫の絵に盛り込まれるのだが、娘は見ただろうか。お友達とのおしゃべりに夢中である。

平山郁夫美術館は実に三十年振り、小学生以来である。子どもの頃は、知らない土地に思いを馳せる事など、至難の技であったのだが、この年齢になるとなるほど、あたかも目の前に絵の中の異国の建物や人物が、今そこに佇んでいるようである。更に自分が知っている瀬戸内に架かる橋が夜景にある様などは、見ている内に橋のライトや星までが、次第に瞬いて私に迫ってきた。

腕の良い描写は写真と変わらないと聞いた事がある。私には正確過ぎる絵を描くなら、写真で良いではないかという意味に聞こえた。それ以来、正確な描写と写真との境界線が、私の中ではあいまいだった。

ところが今回、生きて息づいた絵を観る事ができた。絵の中から風が吹いてくる様だ。

最も平山氏は若い頃、空腹を紛らわす為に描いていたという事だから、観る者に訴える意図は無かったかもしれない。しかし絵は息をしている。本物だった。

娘の方は、いささか目的を見失ってきたようなので、ガイドの機械をレンタルした。同じような年の頃に描かれた絵に感心したようだ。今はそれで良いのかも知れない。今後目にする事柄を、今回の本物と比べれば良い。

次の目的地の今治市大三島美術館では、アートのワークショップがあった。母は少しホッとしていた。黙ってじっとしていなくても大丈夫だからである。一通り館内を巡り、ワークショップに参加する。色々な素材を好きなように組み合わせ、プロジェクターで拡大し、大きな白い紙を木に見立て、素材を投映して一人ひとりの作品を皆で見る。簡単で館内も汚す事なく、全員参加でき、満足のいく、行き届いた素晴らしい活動だった。素材の入った透明な袋を美術館の窓ガラスに貼ると、これがまた外の木々の緑を透過して、雨粒にも似た美しい模様になった。

そしてここで、娘には嬉しい事に、絵を寝転んで観るように職員の方に勧められ、全ての絵を自由に観る事ができた。アートとは自由なんだと伝わった瞬間だった。喜々としてお友達と一緒に、何でも有りとばかりに雄々と観ていた。連れて来て良かった、そう思えた。

今回、娘は本物の絵を目にし、自由な見方も教わった。何より大好きなお友達と一緒に、楽しい思い出もできた。私自身、娘の良い笑顔と素晴らしい絵も見せて頂いた。バスレクやツアー行程など、良い思い出になるよう心を砕いて下さった方々に感謝である。多勢の方々が関わり、協力して頂いた事に、娘はいつ気付くだろうか。

娘にまた一つ、未来の種を植えた。芽が出るか花が咲くかわからないが、待っている今が一番楽しい。真っ白なキャンバスに、思う存分、自分を彩ってほしいと思うのである。

岡山市 石原さん (男性)

2014年2月3日

私は専ら一人で美術館巡りをすることが多いのですが、この日は友人とでした。岡山県の私と愛媛県の友人が久しぶりに再会を果たせたのがまず大三島でした。私は仕事をかえて実家に戻り、友人は体調を崩して帰省療養している折。友人が順調に回復し、もうすぐ復帰も叶いそうということで、都合を繰り合わせてちょうど中間にあたる広島・愛媛県境の生口島と大三島を散歩することにしたのです。
まず十年ぶりの再会を喜び、今後の無事を祈って大山祇神社を参拝、そして境内前の店で海鮮丼に舌鼓。心の癒しにと美術館に誘うつもりが再開は休館の多い月曜。
だからこそ選んだのが隣の生口島にある平山郁夫美術館でした。この「月曜は大概休館」の先入観でしかも平日だからか、かなり空いていたので、人込みが得意でない私には素晴らしい巡り会わせと感謝感激でした。
普段は美術館のような場所には行かないと話した友人も風景画の数々を中心に心を洗われた様子。空白の十年を埋める話をする時間もたっぷりとることができ、館内の喫茶「オアシス」で爽やかなドリンクで喉を潤しつつのマシンガントークでした(笑)
仕事に復帰するお祝いもできて、「月曜の美術館」をしっかり満喫することができました。この後、向上寺や展望台でも話し込んだり、尾道まで足を延ばして千光寺公園を散歩したりもしましたが、一番落ち着いて話せたのはやはり、心に訴えかけてくるような絵の中で過ごせた平山郁夫美術館でした。
友人の今後の活躍をお祈りするとともに、平山郁夫美術館という「時間」と「空間」に篤く御礼申し上げます。
今は簡単に連絡が取り合える世の中となり、この友人も例外でなく、年に数える程度のやり取り、もしくは一方的なご機嫌うかがいのメールをするくらいでした。
年が明けて久しぶりに連絡すると、遠方にいるとばかり、それも多忙でもう会うこともあるかどうかくらいに考えていたので、体調を崩していたとはいえ、機会が得られたことにこそ喜びを見出したいと思えたのです。
月曜の再会に、間接的ではあっても素晴らしい貢献をしてくださったことに重ねて感謝いたします。

広島県広島市 重藤さん(男性)

訪問日:2012年7月4日

平山郁夫の作品を鑑賞する時、いつも思い浮かべることがあります。画家の生まれ育った生口島は、瀬戸内の温暖な風土と海上交易で栄えた歴史を有すること、そして、学生時代に広島で被爆した体験を持っていることです。

平山作品をまとまった形で鑑賞できる展覧会については、これまでも何度か目にする機会があり、その都度、深遠な大作を前にただただ感嘆することが多かったのですが、今回、平山郁夫美術館で鑑賞した「海のシルクロードと瀬戸内の文化」では少し趣が異なりました。

海の交易路や瀬戸内をテーマとした展示内容もさることながら、初めて作品模写を体験したからです。対象にした「求法高僧東帰図」を一途に模写したことで、この作品が発するメッセージに自分なりに触れることができました。

これまでとは違った美術鑑賞の楽しみ方ができ、大変満足した一日でした。

松山市 大谷さん(男性)

訪問日:2012年3月3日

私が小学生の子どもと平山郁夫美術館を訪れたのは友人家族からの誘いがきっかけでした。とある土曜日、ドライブの目的地は普段は縁のない美術館。晴れ渡るしまなみ街道を走りながら心は自然と躍ります。松山から2時間弱で平山郁夫美術館に到着。平山館長さんが、子どもたちにもわかりやすく画の楽しみ方を教えてくださったこともあり、一緒に行った子ども達も熱心に作品に見入っています。子ども同士でどの作品が好きか?と盛り上がっていました。平山郁夫美術館のすごいところは、作品を鑑賞したあと、実際にその作品の風景を見に行けることです。作品のモデルとなった風景や場所が近くにたくさんあり、作品を本当に身近に感じることが出来ました。平山郁夫画伯が愛した場所で、作品と町に触れ合え、すばらしい土曜日となりました。「しまなみ街道」はただの「道」ではありませんでした。私たちの心を豊かにしてくれる「場所」だったんです。

倉敷市 毛利さん(男性)

訪問日:2012年1月24日

しまなみ海道から生口島の平山郁夫美術館に行く私のもう一つの楽しみは・・・。

同館の受付に申し出ると館内に展示されている作品の模写が出来ることです。

画用紙、画板、鉛筆、消しゴム、色鉛筆、椅子を貸していただき、お目当ての作品の前で自分なりにスケッチをして満足感に浸ります。作品の持ち帰りも出来て想い出の紀行となります。ぜひ皆様も一度体験されては如何でしょうか。

倉敷市 原さん(男性)

訪問日:2011年10月12日

しまなみ海道を通っての平山郁夫美術館の鑑賞が今回の旅の目的でした。

しまなみ海道は、噂にたがわぬ風光明媚な景色で何度も車を止めたほどでした。平山郁夫美術館は、一言でいうと「きれいな美術館」という印象でした。幼少期の作品を展示している第一展示室から、順に第三展示室までを展示室中央の椅子で休みながらゆっくりと鑑賞させていただきました。

その中でも「広島生変図」では、福島原発事故を思い起こし、もし画伯がご存命であったらどう思われただろうと、改めて考えさせられました。各展示室への通路には、画伯の生涯の関係書類等が展示してあり、分かり易く興味深く鑑賞することができました。

道中の景色を楽しみながら名画が堪能できる、何度も訪れたい美術館の一つだと思います。

姫路市 矢代Kさん(女性)

訪問日:2011年9月30日

「しまなみ海道と尾道の旅」という企画でバス旅行に参加し、しまなみ街道の途中、生口島という島にある平山郁夫美術館に立ち寄りました。てっぱんの町、尾道観光としまなみドライブとアナゴ御膳が目的の私でしたが、結果的にはこの美術館がメイン・イベントになりました。

「平山郁夫 バーミアンからの熱き思い」と題して、故平山氏が生涯愛し続けたアフガニスタンのバーミアン大石仏(爆破・破壊されて10年)、バーミアン石窟やその周辺をモチーフとした絵画作品、文化財資料が特別展として展示されていました。

たくさんの新作展示の他にも、平山氏の生い立ちや少年時代の絵画、さらにスケッチなどの貴重な平山芸術にも接することができました。中でも、世界地図を背景として、お釈迦様を中心にキリストとマホメットが並ぶ「新三一図(平和の祈り)」を見たときは、平山氏の平和を願う真っ直ぐな遺志が強く感じられてたいへん感動しました。

姫路市 矢代さん(女性)

訪問日:2011年9月30日

「平山郁夫 バーミアンからの熱き思い」展に行ってきました。

バーミアンの大石仏が爆破されて10年。破壊前を描いた「バーミアン大石仏を偲ぶ」と破壊後を描いた「破壊されたバーミアン大石仏」の2枚を並べて見ると、平山さんの悲しみや喪失感が伝わってきます。実際、残念な気持ちになりました。

破壊を全否定はしませんが、同じものは二度と存在しないのだなと考えさせられました。他にも同時多発テロの後に描かれた絵、珍しく自身の原爆体験を描いた絵、しまなみの島々を描いた絵などを見ることができました。

また、流出文化財の石仏なども展示してあり、平山さんの文化財保護活動の一端を知ることが出来ました。実物を見たは初めてだったので興味深かったです。

平山さんの描く砂や青の色彩などは独特で、何とも言えない深みがあります。実物をご覧になることをオススメします。

岡山市 西崎さん(女性)

訪問日:2001年3月24日

折しも東日本大震災の悲惨な光景を目のあたりにして10年前の平山郁夫美術館での体験を思い出しました。丁度、私達(主人と)が鑑賞中に芸予地震が起こり、慌てふためいていた入館者に館員さんの「この建物は大丈夫ですからご安心ください。中央部に移動してください。」と適切な誘導を頂き、落ち着きました。

その後揺れも治まり、何事もなかったかのように最後まで鑑賞することが出来ました。でも帰途が大変で生口橋、山陽道の点検で足止めされ、6時間がかりのの帰宅でした。

昨年は東山魁夷せとうち美術館を見てしまなみ海道に回り久しぶりに平山郁夫美術館に立ち寄りました。とても懐かしかったです。