HOME > 私の美術館体験記募集! > 美術館体験記応募作品のご紹介 > 兵庫県・BBプラザ美術館

「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 兵庫県・BBプラザ美術館 写真

岡山市 石原さん (男性)

2014年3月27日

BBプラザ美術館は、私の中では再生への道しるべやきっかけになった存在といっても過言ではありません。
初めて訪問したのは、2011年3月12日です。その前年、仕事で体調を崩した私は休養して実家に戻り療養していました。身体は穏やかに回復し、外出もリハビリになるからと体調の比較的良い日を選んでは、神社や寺院を巡拝したり、すぐ休憩ができる場所を確保できるという理由もあって美術館や博物館を巡るようになりました。
年が明けて本格的に職場へ戻る環境づくりも兼ねて、当時の職場である東北に戻る準備を進めていたときでした。この冬の東北は雪が多く、病み上がりに障るとよくないからと、職場の方から戻るのを遅らせても構わないと言われ、お言葉に甘えて戻るのを3月の初めから彼岸の連休明けに変更したのでした。
そして、3月11日、あの大震災が起こります。奇しくも病み上がりと大雪に救われた私は、ふと何も東北にできない自分に気がつきました。とても悔しく不甲斐なかったものの、為すすべもなく翌日同じとは言わずともかつて震災に見舞われた神戸を訪れました。
だからといって神戸もやはり平穏、せめて落ち着いたら何らかの貢献ができるようにと、少しでも元気に早く戻るため、気が逸っていました。そんな折、灘を歩いていて目にとまったのが屋久島の写真展の初日でした。以前から一度生きている森の生命力にあやかりたいと思っていた風景に、騒ぐ心は落ち着き、できることをやろうと別の力をもらいました。
東北での仕事はその後、離れてしまいましたが、自分なりのケリをつけて帰ってきました。そして、今年3月27日に訪問した際、そのときの屋久島の写真展のポスターを格安で譲っていると知り、その場でくださいとお願いをしました。
最初はひとつだけとお願いしたのですが、在庫があとふたつと聞いて、構わなければふたつともと改めて頼むと、今度はその在庫が見当たらないとちょっとした騒ぎに(笑)。ヘルプも加わって無事ふたつとも見つかり、譲っていただくことができました。何人もが探してくださってありがたく思えました。
なんとなく、震災の年の気持ちと、翌年体調が快復して屋久島訪問が叶ったこと、そしてこの時のポスター、いろんな記憶と「忘れてはならないこと」で思い出が成り立っていると教えられた気がします。些細な探し物でしたが、私はとても救われたように感じたのでした。

鳥取市 伊藤さん(女性)

訪問日:2013年7月25日

阪神線岩屋駅から南へ歩くこと3分。ガラス張りのBBプラザビルに足を入れる。通りから入るとそこは2階。真っすぐに進むとBBプラザ美術館がある。BBプラザビルは医療施設やレストランなども入居するオフィスビルである。その一角にあるBBプラザ美術館で、企画展「生誕90年・没後10年 西村功パリの情景」が開かれているという。兵庫県立美術館に出掛けるついでに、立ち寄ってみることにした。
オフィスビルの一角にある美術館だからと気軽な気持ちであった。思っていたより展示室は広く、小さい作品、大きい作品、銅版画など合計69点を鑑賞することができた。

佐伯祐三の「郵便配達夫」に感銘を受けて描いたという「赤帽シリーズ」。そして,そこから連想される「駅」をテーマとする作品。「出発合図をする車掌」や「指差し確認」は、指差しをした腕を大きく描いているなど、デフォルメが効果的で、車掌や駅員の一生懸命さが伝わってくる。「ヴィクトルユーゴ駅界隈」は大きな1枚のキャンバスに地上の様子と地下鉄の様子を描いている。初めはそれが分からなかった。頭をひねっていると、息子が「地下鉄だよ。」と耳元で囁いた。そうだ、地下鉄である。下方に描かれているのは,地下鉄の壁に張られたポスターとホームを歩く人である。

息子は、「メトロ室内」が好きであるという。メトロの車両に乗り合わせた人々を描いている。手前に帽子を被った男性。その向こうに黒いコートの女性がお連れの人と並んで座っている。何か物語が始まりそうである。どの絵も物語が感じられる。色使いによるものだろうか。パリという素材が観る者を刺激するのだろうか。

「奇跡のクラーク・コレクション展」を鑑賞する前にちょっと覗いてみるだけのつもりが、どっぷり西村功ワールドにはまってしまった。

これで300円(団体割引料金で240円),大学生以下は無料なんて,驚きである。