北海道標津郡中標津町 原さん
訪問日:2023年12月2日実家帰省の際に一人で小磯記念美術館に行きました。
昨年末から父の具合が悪くなり、今年に入って認知症の診断を受け施設に入りました。
父の診察の付き添いや施設への入居準備などで、北海道から何度も神戸へ帰省した今年でした。例年ならば年に二度の帰省で、神戸にいるのは2週間ほど。今年は何度も帰省し、滞在期間は数ヶ月。ですが、バタバタとしており、日にちはどんどんすぎていきました。
父が施設に入り数ヶ月経ち、父も施設に慣れ、実家でひとりで暮らす母も落ち着きを取り戻し、私も、ゆっくり神戸を満喫したくて、今度はゆっくり過ごすために、5日ほど今年最後の帰省の旅をしました。
今回の帰省は、自分が行きたいところに行き、やりたいことをする帰省にしました。
そして、最初に訪れたのが、六甲アイランドにある小磯記念美術館でした。
ここは、私の思い出に残る場所のひとつです。
小学生の頃に、父と母に連れられて訪れた美術館。同じ神戸市内に住んでいるものの、美術館までは一時間ほど。電車3本を乗り継いでのお出かけはちょっとした旅行気分でした。自分が住んでいるところからちょっと離れていて、いつもとは違う景色が広がるところにある美術館は、とても綺麗でなんだか優しい空気が流れており、大人になった今でもあの日の記憶は鮮明に残っています。両親とゆっくり観て回った絵も記憶に残っていました。
もう一度、あの頃の気持ちに戻り、両親と絵を楽しんだあの日の記憶を思い出し、3人で歩いた道3人で入った美術館を辿りたくて、この度、訪れました。
美術館近くの最寄り駅に降り立った瞬間から、懐かしい空気に包まれて、何十年も前の、まだ子どもだったあの日の、父の言葉が思い出されました。不思議と、駅に着いたときの両親との会話を思い出したのです。そして、美術館へ向かう道も覚えていました。あの日は、両親に連れられて、両親と手をつなぎ、ただ両親に着いて行ったのでしたが、今回、懐かしい風景を思い出すことができました。
美術館の中に入り、作品をひとつひとつ見ている間にも、昔の記憶が蘇ってきました。父と母とひとつひとつ、感想を述べ合いながらみて回った記憶が蘇ってきました。
元気だった頃の父と子どもだった私との思い出に浸り、胸を熱くしながら、今回の展示もひとつひとつゆっくり楽しませていただきました。
今回の特別展示は、「働くひとびと」という内容でした。農場の絵もあり、現在北海道の牧場に嫁ぎ酪農家として生活している私にとっては身近な絵であり、普段の生活と重なる部分もあり、なんだかほっこりとした気持ちになりました。その他の作品からも、働くひとびとの姿動きを捉えた作品、時代に沿った人々の生活が描かれた作品などが並び、熱く伝わってくるものがありました。
あたたかい優しい空気の中、美術館をめぐり作品を楽しむことができました。あの頃の穏やかな日々を思い出し、懐かしみ、まるであの頃に戻った気分で美術館を楽しむことができました。子どもの頃のあの日の両親と過ごした時間、両親との会話を思い出し、思い出に浸ったひとときでした。
とても良い、“両親との思い出を辿る旅”のスタートとなりました。
吹田市 村岡さん(女性)
訪問日:2009年8月22日小磯美術館を訪れたときのこと、警備員さんに、「おじょうさんですか?」と話しかけられました。
折りしも、目の前には「二人の少女」の絵があり、私ども夫婦は娘二人を連れておりました。「この絵のモデルは、小磯さんのおじょうさんなんですよ」と、すべての漢字にルビのふられた子ども用鑑賞ガイドを手渡してくださいました。
教えてもらえたことで、それまで神様みたいな存在だった画伯が、私の中で、同じ地平に立つPTA仲間ほどに親しく思われました。「こっちの写真より、アトリエのほうがハンサムですよ」警備員さんの言葉につられて、部屋を再現した場所へ向かいました。
書籍の並んだ棚や洋風な明るい室内を眺め、こういう環境で名画が描かれたのか、と大変興味深かったです。子ども用鑑賞チラシがあるところも、警備員さんの対応や建物の造りも、みなとても好印象で、またふらりと訪れたくなる美術館でした。