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アートトラベラー

岡山市立オリエント美術館 オリエントをひもとけば現代の生活につながる

《有翼鷲頭精霊像浮彫(アッシリア・レリーフ)》イラク ニムルド出土 前9世紀 古代メソポタミア芸術の到達点ともいわれる約2900年前の作品。松かさと聖水の入っている桶を持ち、洗浄の儀式を表したものとされている。

国内で数少ないオリエント美術を専門に収集、展示する岡山市立オリエント美術館。今年4月にリニューアルオープンし、オリエントの歴史や文化をより身近に、気軽に楽しめるようになりました。

オリエントとは、ローマから見た東方のこと。西はエジプトを含む北アフリカ、北はトルコあたり、南はアラビア半島、東はパキスタンあたりまで含む地域を指します。アフリカで誕生した人類はオリエントを通って世界へ広がりました。農業の始まりも、世界最古の文明が興ったのもこの地でした。人類の歴史に大きな影響を及ぼした地域といえます。

オリエント美術館では、そうしたオリエントの考古美術資料約五千点をコレクション。これまでは時間軸での展示でしたが、リニューアル後は「アクセサリーのはじまり」など現代の私たちにも身近なテーマごとの展示に。今ではあたりまえの物事のはじまりを、館蔵品を通して知ることができます。また、新しく設置された大スクリーンでは、迫力の映像で収蔵品の細部や、雄大なオリエントの風景を観ることができます。

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展示から建物までオリエントを体感

オリエント美術館に足を踏み入れると、別世界が広がります。吹き抜けのある中央ホールと2階の光庭には自然光が降り注ぎ、凹凸に加工したコンクリートの壁が、中東の乾燥地帯の雰囲気を感じさせ、壁や床に飾られたモザイクや柱頭装飾とあいまって神秘的な空間を創り出しています。展示室は中央ホールを囲むように回廊状に配置され、土器や陶器、ガラス、彫刻、青銅器などを眺めながら歩いているとオリエントを旅している気分になります。

なかでも引き寄せられるのは、《有翼鷲頭精霊像浮彫》。古代オリエントを初めて統一したアッシリア帝国の宮殿の壁を飾っていた貴重なレリーフの一部です。ハゲワシの頭、翼を持つ精霊アプカルが描かれ、筋肉の盛り上がりや羽根、衣服の細やかな表現に目を奪われます。

また、展示室2階の洗面所には17世紀末に途絶えてしまった中世ペルシア陶器特有の絵付け技法「ラスター彩」を再現した手水鉢が設置されています。

一巡りした後は、館内の喫茶イブリクでアラビックコーヒーを味わいながら余韻に浸れます。

DATA

岡山市立オリエント美術館

住所/岡山県岡山市北区天神町9-31
TEL/086-232-3636
開館時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜日(祝日の場合は翌平日)、
展示替え期間(随時)、12/28~1/4
料金/館蔵品展+併設小企画展
一般310円、高校生・大学生
210円、小学生・中学生100円。
※「岡山芸術交流2022」期間中は特別料金になります。
駐車場/なし

MAP

展覧会情報

「岡山芸術交流2022」

2022年9月30日(金)~11月27日(日)
岡山市で3年ごとに開催される国際現代美術展。オリエントの考古美術資料と現代美術との融合を楽しめます。

館蔵品展
「シティ・ライフのはじまり、オリエント」

2022年9月30日(金)~次年度
約5000年前にメソポタミアに最古の都市が誕生しました。化粧やアクセサリーをはじめ、金属・ガラス・陶器生産はどのように始まったのか。周辺地域との交流など、都市が生み出した叡智と美を見ることができます。

小企画展 国際ガラス年2022協賛
「古代ガラスの創造力」

2022年9月30日(金)~11月27日(日)
個体から液体へ変移する温度が明確な金属と異なり、ガラスは粘性の高い状態を長く保ちます。この性質を利用した古代ガラス工芸の魅力を紹介します。

小企画展「イエスの物語」

2022年12月6日(火)~2023年2月5日(日)
1900年代初頭のパレスチナ地域を撮影した古写真コレクションから、イエスにまつわる写真とその物語を紹介します。
はP22の優待割引クーポンがご利用になれる施設です。

せとうち美術館ネットワーク
スタンプラリー

2022年4月1日~2023年3月31日

JB本四高速が、瀬戸内の美術館・博物館と連携し、瀬戸内のアートの魅力を発信する「せとうち美術館ネットワーク」。右の冊子に参加している81の美術館・博物館を巡ると、スタンプの数に応じて図書カードや参加施設のオリジナルグッズがもらえます。冊子は、ネットワーク施設と本四高速道路SA・PAで配布しています。
https://www.jb-honshi.co.jp/museum/

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