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せとうち島めぐり

北木島

岡山県笠岡市

日本の建築文化と島の暮らしを支える石の島

瀬戸内海には300以上の有人島があり、「花の島」「アートの島」など、それぞれ異なった魅力を持っています。北木島は花崗岩の産出地で、古くから石材産業で栄えてきた「石の島」。

北木島で採石される良質な石は「北木石」と呼ばれ、全国各地で利用されています。江戸時代は、徳川幕府が再築した大阪城の石垣などに使われ、明治から昭和にかけては靖国神社の大鳥居や明治神宮の神宮橋、国指定重要文化財の日本銀行本店本館などに使われて、日本の近代化に大きく貢献しました。

島に着いたら、豊浦港にあるK’s LABOへ。石の歴史や文化などを紹介するストーンミュージアムとカフェが併設された複合施設です。レンタサイクルの貸出もあるので、石の歴史を学んでから島内を巡ると、より島を楽しめるはず。

島の海岸沿いをよく見ると、いくつもの採石場跡が残っています。石材産業の最盛期だった昭和30年代は127の採石場があり、島民の9割が石材関係の仕事をしていたそうです。

当時の活気を物語る一つが旧映画館の光劇場。昭和20年代の終わりから42年まで営業していた木造の映画館です。現在は、昔ながらの設備を残しながら、北木石に関するドキュメンタリー映画などが見られるようになっています。

鶴田石材の「石切の渓谷展望台」では、約60メートルの深さまで削られた花崗岩の岩肌を見下ろせます。長い歳月にわたる石の歴史を伝える貴重な景観で、自然に立ち向かった石工の凄さも伝わります。

2019年に、世紀を越えた石の歴史が評価されて日本遺産に認定されました。島の石材産業は時代の変移によって衰退していますが、代わりに観光に生かされて、今もなお島の暮らしを支えているのです。

石切の渓谷展望台から見る採石場の岩肌は、まさしく絶景

シマトリセツ

小林 希さん

取材・写真・文 小林 希さん

旅作家・元編集者。著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など。2014年に広島(香川県)で島の有志と『島プロジェクト』を立ち上げ「ゲストハウスひるねこ」をオープン。2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。産経新聞などで連載中。2022年に本四高速のせとうちアンバサダーに就任。

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