ホーム > 瀬戸マーレ vol.15 > せトラベル 大阪巡りは、どないでっしゃろ?
情報誌「瀬戸マーレ」

大阪巡りは、どないでっしゃろ?

にぎやかな食い道楽の街へ

水の都として栄えた大阪。
江戸時代には昆布やかつお節などの食材が、瀬戸内海を経由して全国から集められたという。
大看板の並ぶ道頓堀から、魚市場として名高い黒門市場へと、
人情味あふれる大阪の街へ食い道楽に出かけよう。

なにはともあれ道頓堀

道頓堀は、大阪ミナミの繁華街の中でも、ひと際にぎやかな通りである。派手な看板に、カニやエビなどの看板が吊ってあるのが、まるでテーマパークのようだ。

行き交う人の流れに沿って歩けば、見事に食の店ばかり。さすがは浪速、食い道楽の街。なかでも大阪名物であるたこ焼きの店の前には、たくさんの人が並んでいる。

そんな道頓堀川のほとりには、かつて「五座」と呼ばれた五つの有名な劇場があったらしい。贔屓の役者の出る歌舞伎や、人形浄瑠璃を見た後は、茶屋へ寄って食事をする。そんな風流で活気ある町人たちであふれていた通り。そう想像すると、道頓堀の景色もひと味違って見えてくるようだ。

(写真左)あちこちにたこ焼きや、お好み焼きの店が(写真右)道頓堀のシンボル・くいだおれ太郎やフグも
(写真左)あちこちにたこ焼きや、お好み焼きの店が
(写真右)道頓堀のシンボル・くいだおれ太郎やフグも

(写真右)「上方浮世絵館」では、道頓堀の歌舞伎芝居を描いた、大阪の浮世絵版画を展示。
(大阪市中央区難波1-6-4、TEL.06-6211-0303)
ちなみに五座とは角座・中座・弁天座・朝日座・浪花座のことで現在は残っていない。

上方浮世絵館
上方浮世絵館

大阪の胃袋、黒門市場

江戸時代に魚市場として始まった、大阪の胃袋・黒門市場は、正月準備の買い出しをする人でごった返している。

黒門といえば、何はさておきフグが有名だろう。市場内に数多くある鮮魚店では、どこもたいていがフグを置いている。店先でさばいて、その場で天ぷらや鍋にしてくれる店もあり、その気軽さがナニワ風情。アツアツのフライに「ごっついエエ味やねえ」とつぶやけば、温かいお茶を出してくれた。

大きな水槽のある店先では、客がフグの値踏みをしている。丸一匹を指して「これ、愛媛に持って帰りたいんだけど」。四国から車で来たらしい。「すぐに用意できますよ」と、店の人が袖をまくった。

市場では、あちこちでかけ声が上がり、大変な賑わいである。その中を歩きまわって、お餅屋さんの和菓子、青果店のミックスジュースを一杯所望。精肉店ではコロッケが揚がっていて、思わず手が伸びる。

かつお節と昆布の店にも入った。乾物商が多いという大阪ならではの一店だ。ポピュラーな真昆布に、色の薄いだしが出る利尻昆布、濃い羅臼昆布。料理によって、削り節をカツオからサバ・イワシ・マグロなどに変えるといいとか。さすが大阪、味への貪欲なこだわりに、うなってしまうね。

鮮魚店を中心に約170店舗が並ぶ黒門市場
鮮魚店を中心に約170店舗が並ぶ黒門市場。近くの料理店の仕入れ用から、地元の食卓まで幅広い客層を誇る。大正時代には「中央市場になくても黒門へ行けば」といわれるほど発展したという。通り角の青果店なべじではジュースも販売
黒門市場

住所/大阪府大阪市中央区日本橋2-4-1(商店街振興組合) TEL/06(6631)0007(組合事務所)
営業時間・休み/店舗により異なる
URL/http://www.kuromon.com/


大阪でフグを広めた立役者、浜藤(写真左)。
てっちり・てっさの老舗食事処でフグを購入することもできる。九州は熊本・長崎の養殖トラフグほか、天然トラフグは要予約。店自慢の味ぽん酢も販売。

お餅屋さんである芳月堂(写真右)の和菓子は絶品。
手でこねられている餅は今や貴重で、もち米本来の味が薫り立つ。鏡餅や背負い餅など季節の風習も担っている。

(写真左)浜藤(写真右)芳月堂
TOPに戻る

だしが決め手の大阪「なべもん」

大阪の味覚を支えるのは、何といっても「だし」。
昆布とカツオの合わせだしを生み出したのは大阪だともいわれている。
自由な発想のもと、組み合わせが得意な大阪人独自のごちそう「うどんすき」と、
冬の名物「てっちり」を味わって、暮れゆく街を歩いてみたい。

元祖うどんすきの美々卯

美々卯本店の一室で、ボクはうどんすきに夢中になった。元祖うどんすきの老舗店は、浪速っ子なら誰もが知っているという。うどんすきを考案したのは創業者の薩摩平太郎氏だ。その妻で戦後、店の再興に力を尽くしたキクさんは「うどんすきというものは、何やこんなもんかと、ご存じないお客さんに思われるのはかないません」と生前に言ったというが、なるほど、これはいわゆる「うどん」とは一線を画した、全く異なるものなのである。

まず、だしの中に具とうどんを同時に入れる。それが驚きだ。炊きこむほどに味の染みる、太めに打ったうどん。具の野菜やアナゴは全て、あらかじめ丁寧に下味がつけられている。見た目も会席料理のような華やかさがあり、心を湧き立たせてくれる。なんといっても、だしの味がいい。利尻昆布に、かつお節は宗田節を用いたその味は、創業から変わらない。上品ながらコクがあり、いくらでも飲めてしまう。

歴史を振り返れば、江戸時代に米や特産物、昆布やカツオが北前船に乗り、北海道、九州、四国から大阪へ運ばれてきた。豊かになった大阪商人、特に旦那衆と呼ばれる人々によって食文化も花開いたのだ。そんな時代を経て、昭和3年に生まれた美々卯のうどんすき。今後は若い人にも親しんでもらいたいと、謙虚で真摯な姿勢を保っている。

平らな鍋はうどんが取り出しやすいようにと独自に考案
平らな鍋はうどんが取り出しやすいようにと独自に考案。そう聞いて、慌てて持ち上げていた箸を鍋の淵に這わせた。イタヤ貝の杓、とっくりのだし壺も昔のまま
美々卯本店

風流な本店の入り口(写真下左)。
御霊神社がそばにあり、かつては文楽帰りの客でにぎわったという。美々卯の前身は200年続いた料亭・耳卯楼というから、その上品な味付けにうなずける。
「なにわコース(4,500円)」(写真下右)は、うどんすき1人前に季節の前菜取り合わせ(刺身入り)、デザート付き。小さな子どもから年配まで幅広い層に親しまれる味だ。


住所/大阪府大阪市中央区平野町4-6-18
TEL/06(6231)5770
営業時間/
午前11時30分~午後9時30分(L.O.8時30分)
12月は~午後10時(L.O.9時)
休み/日曜・祝日、1月1日~3日
URL/http://www.mimiu.co.jp/

(写真下左)美々卯本店入口(写真下右)「なにわコース」

冬の醍醐味てっちりに元気が湧くすっぽん鍋

法善寺横丁の提灯に明かりがともった。石畳の路地は昔ながらの風情が残っていて、上方とは本来こういう雰囲気だったのかと感慨深い。苔むす水掛不動さんのすぐそばに、ふぐ割烹の店、浅草は佇んでいた。

こちらでは大阪の冬の味覚、てっちりを存分にいただいた。

寒さが増す度にぐんと育った1.5㎏ほどの大きなフグは、ほんのり甘みのあるやさしい味。一晩寝かせて熟成させたてっさは身が締まって歯ごたえがいい。

次にカラッとして香ばしい唐揚げ。てっちり鍋は、利尻昆布のだしと秘伝の自家製ポン酢で楽しむ。仕上げは、うま味たっぷりの雑炊だ。

もう一つ同店の名物がある。すっぽん鍋だ。あっさりした味わいが女性にも好まれ、コラーゲンたっぷりで美容にもよいと人気上昇中。すっぽんから作られるスープは黄金の味と呼ばれ、滋養いっぱいで体もホカホカあたたまってくる。

すっぽん鍋は海外のお客からも「上品な味!」との声が多い。試行錯誤を繰り返して行き着いた味だ。「いいものはすぐ取り入れるのが大阪人。伝統にとらわれない自由な発想が、美味しい食を生み出してきたんじゃないでしょうか」と3代目大将の辻宏弥さん。町の人に愛されてきた味は、ずっと健在でいてほしい。

こじんまりとした落ち着く個室がメインの店内
こじんまりとした落ち着く個室がメインの店内。
障子を開ければ、眼下に水掛不動さん
法善寺 浅草

住所/大阪府大阪市中央区難波1-1-12(大阪ミナミ法善寺水掛不動前) TEL/06(6211)1649
休み/第3日曜(10月~3月。4~9月は日曜・祝日とお盆)、12月31日~1月2日
料金/てっちりコース(9月下旬~4月中旬)10,000円、すっぽんコース(年中)8,000円。
ほかに鯛、はも料理など季節のコースもあり
URL/http://www.houzenji-asakusa.jp/


法善寺横丁に店を構える浅草(写真左)。夕暮れどきは特に美しく、苔に覆われた水掛不動さんへお参りする人の姿が絶えない。
浅草では店オリジナルのポン酢も。毎年、スタッフ総動員でゆこうを手しぼりしている。ゆこうは徳島産の柑橘類で、甘みと酸味のほどよい調和が上品なだしの味を引き立てる。(写真右)

(写真下左)法善寺横丁に店を構える浅草(写真下右)浅草では店オリジナルのポン酢も
TOPに戻る

上方落語で新年の初笑い

大阪天満宮に近い繁昌亭では、上方落語を毎日上演。
戦後60年ぶりに復活した小屋で、笑いの波が今日も渦巻いている。

芸の花咲く繁盛亭

大阪天満宮の境内にある、天満天神繁昌亭へ立ち寄った。食がこれだけ発展したのは、大阪の文化に活気があったからなのだ。芝居小屋に伴って茶屋が繁昌する。さらに繁昌させるのに、もっと「うまいもん」を作る……あれ、ボクも大阪に染まってきたぞ。

繁昌亭ではプロの落語家による寄席が毎日開かれている。昼席では計8席、ベテランから若手の噺家が登場するのだ。これは聞かねば!

天神祭の祭船をイメージしたという外観。ずらりと提灯が並んで、これぞ浪速という下町情緒が薫ってくるようだ。

本日の一番手は、露の団姫(まるこ)さん。枕で軽く笑わせてくれた後、古典落語の「時うどん」を披露。ズルズルっとうどんを食べる演技も愉快で、腹を抱えて笑ってしまう。

古典のほかに、新作落語を演じる噺家さんもいる。なんと、ネタは当日に決まるらしい。その日のお客の顔を見て、最適な演目が選ばれるのだ。つまりネタは毎日変わるわけで、これが寄席本来の形である。時折、場面転換や動作を表現するのに三味線や鳴り物が一節、演奏されたりもする。はめものと呼ばれ、上方ならではのスタイル。これがまた風流で面白い。
トリは大ベテランの笑福亭福笑さん。絶妙な間合いや身振りで、何度も笑いの渦を巻き起こしてくれた。

笑い過ぎて、ちょっと小腹も空いてきたかな。

館内の天井にも提灯がずらり
館内の天井にも提灯がずらり。2階席もあり収容人数256人。昼席は全部で8席。途中で仲入(休憩)と、2つの色物(マジックや漫談など)が入る
天満天神繁昌亭

開場を待って、入り口に並ぶ人々。
空席があれば当日券も発行。


住所/大阪府大阪市北区天神橋2-1-34
TEL/06(6352)4874
受付時間は午前11時~午後7時30分
料金/昼席=前売2,000円、当日2,500円、
朝席・夜席=演目により異なる

開場を待って、入り口に並ぶ人々。空席があれば当日券も発行

営業時間/平日は、昼席=午後1時~4時くらい。夜席=午後6時30分または7時~(演目により変更あり)。
土日には、朝席もあり。詳細は問い合わせを。
なお2012年12月30日(日)は夜席休み。31日(月)は午後10時より年越し寄席あり。
※チケットは、原則公演日の2ヶ月前同日発売(昼席は全自由席で、当日午後12時30より整理番号順に入場)。
繁昌亭窓口で販売(受付時間内)、またはチケットぴあ(要手数料)等にて販売。
URL/http://www.hanjotei.jp/

みどころ

初笑いと一緒に楽しもう~繁盛亭周辺~天満天神繁昌亭のある周辺は、遊びどころや見どころがいっぱい。おすすめスポットをご紹介します。
●大阪天満宮

「てんまのてんじんさん」と親しまれている大阪天満宮。
学問の神様、菅原道真公を祀り、受験生にも人気。
2月のてんま天神梅まつりでは、大盆梅展も開催。

●2013年の開催は2月8日(金)~3月10日(日)
午前9時30分から午後4時まで(4時30分閉場)
大人500円、小学生300円


住所/大阪府大阪市北区天神橋2-1-8
TEL/06(6353)0025
URL/http://www.tenjinsan.com

大阪天満宮
●天神橋筋商店街

南北2.6㎞と、直線距離で日本一を誇る商店街。
新旧様々なお店が、約600店もひしめいていて、大阪の活気を感じられる場所。


住所/大阪府大阪市北区天神橋1~7
営業時間・休み/各店舗による
URL/http://tenjin123.com/(1~3丁目)
http://tenjinbashi.net/(4~6丁目)

天神橋筋商店街
●喫茶ケルン

繁昌亭の斜め向かいにある喫茶店。寄席の後にいっぷくできるのがいい。
名物の「繁昌亭カレー(600円)」は、コクのあるまろやかな味で、ちょっぴり辛めのあと口。
出番前後の噺家さんが立ち寄ることも。


住所/大阪府大阪市北区天神橋2-4-2
TEL/06(6353)6264
営業時間/午前8時~午後6時 ランチあり
休み/土曜


喫茶ケルン
●浪花本染こころや(てぬぐい)

呉服屋の五代目、名倉克典さんが、大阪発祥の伝統技術である「注染」に着目して作ったオリジナルブランドのてぬぐい。
米朝一門会で「上方落語紋尽くし」を創作したのをきっかけに、住吉大社の初辰猫やたこ焼き、通天閣など、あくまで大阪に
こだわってデザインしている。てぬぐいの生地は、しっかりとした着物地で、お土産にも人気。


住所/大阪府大阪市住之江区粉浜2-12-26
TEL/06(6672)3905
営業時間/午前10時~午後7時
休み/木曜、お正月とお盆
URL/http://www.cocoroya.com
※道頓堀通りの中座くいだおれビル1階
「なにわ名物・いちびり庵」でも販売

浪花本染こころや(てぬぐい)
TOPに戻る