ホーム > 瀬戸マーレ vol.16 > せトラベル あでやかな春色に輝く高知へ
情報誌「瀬戸マーレ」

あでやかな春色に輝く高知へ

ブライトカラーの花園へ

南国高知は一足先に春の訪れを体感できるところ。
高知市南東部の五台山に作られた植物園では、季節の花々が咲き誇っている。
高知の伝統・皿鉢料理(さわちりょうり)に見立てた「花皿鉢」も公開中だ。
春の日差しと彩り豊かな植物の美を満喫したい。

五台山に広がる牧野植物園

高知市内を一望できる五台山。ここに約6ヘクタールの敷地を持つ高知県立牧野植物園はある。自然のままの丘陵地を生かした園内には、野生も含めて3,000種類以上の植物が四季を彩っている。

ときは春、なんといっても桜のシーズンは外せない。そのあとも、ツツジ、トビカズラ、アジサイ、ユリと花は咲き続ける。期間限定のフラワーショーでは、土佐名物の皿鉢料理になぞらえた、直径約10mもの花皿鉢が展示されているのも見逃せないだろう。

小高い山を登って園内に足を踏み入れたボクは、迎えてくれた木々の緑に心洗われた。マイナスイオンだろうか、並木道の木々から吹く風が心地よい。屋根のある回廊からは、高知平野の眺望も楽しめる。小鳥が鳴いて、空を仰げば空気もうまい。足元に、見知らぬ花がそっと咲いているのに気が付いて、微笑ましい気持ちになった。山歩きをしているみたいで、植物園にいることを忘れてしまいそうだ。

(写真上)温室のある南園(写真下)トサノミツバツツジ
(写真上)温室のある南園。
景色と調和させた水景庭園が広がり、サクラ類やハナショウブ、ハス、リンドウなど季節の園芸植物を楽しめる

(写真下)土佐の名物料理、皿鉢料理を模したフラワーショーの「花皿鉢」(イメージ写真:牧野植物園提供)。直径約10mもの皿の上に、春を呼ぶ花が盛り付けられて見応えあり

ジャングル気分で温室探検

なだらかな下り坂の道を進んでいくと、熱帯植物を集めた温室にたどりついた。コンクリートの外壁には、高知で名高いアコウの木が植えられている。これから先、何十年もかけて、外壁を覆わせる構想なのだそうだ。

中に入ると、静寂につつまれた。ジャングルの奥地をイメージしたエントランス。無風だ。音のない世界を一瞬、感じる。

中は8つのトロピカルゾーンに分かれていて、バナナの花やミラクルフルーツ、マホガニーの木なんかもある。石と土で組まれた滝から水が流れて、南国ムード満点。
熱帯植物の甘い香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。

温室には8つのゾーンがあり、滝が広がるジャングルなど工夫が凝らされている
温室には8つのゾーンがあり、滝が広がるジャングルなど工夫が凝らされている

緑の中でヘルシーランチ

昼食をとって一休みしようと、本館のレストラン「アルブル」へ入った。緑に囲まれたテラス席に座り、旬の野菜たっぷりの日替わりパスタを注文する。本日はほうれん草とスモークサーモンのクリームパスタだ。コクのあるホワイトソースに野菜の甘みが生きている。シャキっと新鮮なサラダには、自家製ドレッシングをかけていただいた。

食後には季節のフルーツタルトをオーダーして、そのみずみずしい果実味に、晴れやかな心地になる。春のうららかな空気の中で、大地のエネルギーをしっかりと受け取った。

日替わりパスタのランチ
日替わりパスタのランチ(1,050円)ほか、
お魚ランチ(1,680円)などもあり
高知県立牧野植物園

トサノミツバツツジ。牧野博士が学名をつけた植物の一つ。


住所/高知県高知市五台山4200-6 TEL/088(882)2601
開園時間/午前9時~午後5時 休み/年末年始
入園料/大人700円、高校生以下無料
URL/http://www.makino.or.jp/
※花皿鉢のフラワーショー
「五台山花絵巻 四ノ巻 土佐國の春」は2013年5月12日(日)まで開催中


トサノミツバツツジ
★園内施設
レストラン アルブル(写真右)

TEL/088(882)0410
営業時間/午前9時~午後5時。ランチは午前11時30分~午後3時


ミュージアムショップ バイカオウレン

TEL/088(878)1181


ガーデンショップ nonoca(野の花)

TEL/088(878)0630

レストラン アルブル
レストラン アルブル
TOPに戻る

ビビッドな新鮮魚介の高知のごちそう

土佐の郷土料理として一度は味わいたい、皿鉢料理。
祝宴などで大勢でいただく豪華絢爛な盛り付けが魅力だ。
香ばしさが魅力のかつおのタタキを始め、地の食材を片っ端から平らげて、
土佐人よろしく陽気に盛り上がってみよう。

豪快な盛り付けの皿鉢料理

大皿がどーんと目の前に置かれた。目を見張るほどのご馳走が、皿の上にどっさり。色みも鮮やかで、何から箸をつけたらよいやら。いただきます、と両手をそろえてから、一つずつ口に入れていく。

皿鉢料理は、土佐の伝統料理である。といっても、調理法を言うのではなく、豪華絢爛でダイナミックな盛り付けと、大皿から各自が取り分ける食べ方を指している。かつおのタタキから、刺身や寿司、組み物と呼ばれる焼き物・揚げ物・煮物・練り物など色にも富んだ料理が、ところ狭しと皿の上に盛られているのが特徴だ。

何といっても初鰹。まずは、かつおのタタキから。高知では、ニンニクのスライスしたものを薬味にして、青ネギ、タレをたっぷりつけていただく。モチモチした歯ごたえと、新鮮なかつおの香ばしさ。喉が鳴ってくる。

かつおの刺身がこれまた美味だ。臭みのないフレッシュ感で、じんわりとうま味が口の中に広がる。

寿司も色々そろっている。なかでも、さばの姿寿司が目を引いた。頭の中まで酢飯がぎっしり。素朴な見た目と裏腹に、脂の乗ったサバは極上の味わい。さすが高知、どの魚も生きがよい。

祝宴や行事の集まりなどでふるまわれる皿鉢料理は、元来、神さまに捧げる料理であったらしい。今では、集まった人々が思いのままに取り分けて、宴の席を盛り上げている。お酒に目のない土佐人のライフスタイルにもぴったり合った食べ方だと思う。

皿鉢料理
皿鉢料理。本池澤の「盛り込み皿鉢(4~5人前・12,600円)」。
直径約38センチの大皿に、かつおのタタキから刺し身、寿司、ちゃんばら貝、りゅうひ巻、ズワイ蟹爪、くらげ、酒盗、鴨ロース、スズキの南蛮漬け、海老塩辛、羊羹に果物など16種がずらり。
季節によって内容は一部変更

土佐の味、まだまだ続く

高知ならではの味覚は実に豊富だ。町の居酒屋にも地元食材の品はそろっている。

土佐の珍味、ちゃんばら貝をいただく。小さめの巻き貝に楊枝を刺して、貝の方をぐるんと回すと、すんなりと身が取り出せた。なるほど、先っぽが刀のように尖っている。そう、チャンバラは切り合いの意味なのだ。もちっとした食感にほんのり甘さが広がった。これはイケる!

どろめに手を伸ばす。イワシの稚魚である。透明でプリプリしたものを三杯酢につけて食した。鮮度ばつぐんで、酒の肴にぴったりだ。

鮮やかな朱色の四万十川えびを、サクサクとほお張る。清流育ちの川えびは、くさみがなく、振りかけられた塩加減が絶妙だ。

ほろ酔い気分で店をはしごする。ご飯ものも食べたいなあ、と見回して、かつおめしなるものに出合った。かつおの炊き込みご飯のようで、磯の匂いと、やさしい甘さのおふくろの味。ますます食欲をそそられて、高知の地鶏にもチャレンジだ。土佐ジローのジューシーな串にかぶりつき、はちきん地鶏のうま味に目を見張る。ほっぺたが落ちそうとはこのこと。炭火焼肉おにぎりもゲットして、高知の夜を謳歌した。

ひろめ市場
ひろめ市場
本池澤

住所/高知県高知市本町2-1-19おびさんロード商店街
TEL/0120(049)138
営業時間/午前11時~3時、午後5時~10時(L.O.9時30分)
休み/なし
URL/http://www.ikezawa.co.jp

鰹バッテラ(900円) 鰹バッテラ(900円)。
シソとニンニクが入って、あっさりいただける
葉牡丹

住所/高知県高知市堺町2-21
TEL/088(872)1330
営業時間/午前11時~午後11時
(ランチは~午後2時。日祝はなし)
休み/なし
URL/http://habotan.jp

四万十川えび唐揚げ(700円)
四万十川えび唐揚げ(700円)
ひろめ市場

住所/高知県高知市帯屋町2-3-1 TEL/088(822)5287
営業時間/平日・土曜・祝日=午前8時~午後11時、日曜=午前7時~午後11時 休み/各店舗により異なる
URL/http://www.hirome.co.jp


★ひろめ市場内
かつおめし定食   炭火焼肉巻きおにぎり   高知の地酒
鰹処ぼっちり
かつおめし定食(750円~)は、ランチメニュー。売り切れなければ夜も可

  えーとこどり
炭火焼肉巻きおにぎり(2個・350円)。
炭火でじっくりとタレをつけながら焼いた、人気の一品。

  土佐蔵社中
高知の地酒がいろいろ試せる。
営業時間/午前10時30分~午後10時
休み/水曜(祝日の場合は営業)
  営業時間/正午~午後10時30分
休み/なし
  営業時間/午前10時~午後10時
休み/なし
TOPに戻る

七色に光る土佐和紙の世界

仁淀ブルーと呼ばれる清流、高知の仁淀川。 
その美しさは、水質全国1位※と知られ、川のほとりでは伝統工芸の土佐和紙が今も伝承されている。
水と植物から生まれる、和紙のあたたかな風合いが印象的だ。
受け継がれる日本の美の、めくるめく色の世界に酔いしれた。

※国土交通省発表の平成22年度全国1級河川水質ランキングによる

清流が育んだ匠の技

高知を流れる仁淀川は、水質のよさで有名だ。青く透明に澄んだこの川の水によって、古くから土佐和紙が育まれてきたという。

和紙の魅力は、いつまでも触れていたいと感じる、手触りの良さ。一体どうやって作られるのだろう。流域に佇むいの町紙の博物館で、土佐和紙の歴史に触れた。

手すき和紙の原料は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの木の皮だ。冬の間に蒸して皮をはぎ、水洗いなどの作業が行われる。その後、チリを取ったり、たたく作業を経て、紙すきへとつながるのだ。さらに乾燥を経て、風合い豊かな和紙が生まれる。約400年前の江戸時代に、土佐七色紙が幕府に献上されており、これが土佐和紙の発祥と言われている。

製紙の歴史のなかで、「紙業界の恩人」と呼ばれるのが、いの町出身の吉井源太。典具帖紙や三椏改良半紙など28種類の新しい紙を考案し、製紙用具の改良にも力を注いだ。国内はもとより、海外にも市場を求めたという。

仁淀川のほとりで、原料・用具・技術の3拍子が揃い、土佐和紙は発展してきたのだった。


染色された極薄の土佐典具落水紙
染色された極薄の土佐典具落水紙。落水紙は、
もとは美濃和紙の技法で、浜田さんは現地にて習得

仁淀川の青い水は、仁淀ブルーとも表現されている
仁淀川の青い水は、仁淀ブルーとも表現されている

落水紙のあやなす美

カゲロウの羽と呼ばれるのが、土佐典具帖紙である。極上の薄さに強さが加わった手すき和紙は、海外の美術館で修復に用いられたこともある、高知の名品だ。

和紙職人の浜田治さんは、「落水」という独自の土佐典具落水紙を制作している。仁淀川沿いの土佐和紙工芸村くらうど内の工房で、その技を目の当たりにした。

手すきの薄紙に、水を上からシャワーのように噴霧状に落として、小さな穴の模様をつける。これが落水紙だ。ユニークな製法で作られた和紙は、高級レースのように繊細な模様を浮かび上がらせる。極薄の1枚を手にとると、ベールのようにはかなげだ。

浜田和紙の染色方法は、折り染めや絞り染めなどの後染めと、紙すき前に原料を染める先染めがある。どちらにしても樹皮の繊維には、化学繊維にない光沢があり、その毛羽立ちや水でふやけたさまが、染めに作用して深い味わいが生まれる。これが和紙の大きな魅力だと、浜田さんに教わった。

水シャワーの噴霧で作る、落水紙
水シャワーの噴霧で作る、落水紙。和紙は現在、ふすまや表具店で用いられるほか、近年はちぎり絵の材料として活躍し、新たな活用方法が注目されている

レッツトライ!紙すき体験

土佐和紙工芸村くらうどでは紙すき体験ができるそうだ。早速チャレンジ!原料を溶かした水の中に、ハガキ判の型枠をぐっと入れていく。これを持ち上げると、和紙の原料が枠目に入る。さらに前後左右に揺らすと、繊維どうしが絡まって、どうにか形になってきた。

水分が多いうちに、花びらや葉っぱなどを表面に散らして、オリジナルの手すき和紙ハガキが完成。しっかりと厚みのある、薄茶色の手すき和紙。その上に、紅や黄、青に緑が重なる。典具帖紙の技にはほど遠いけれど、ごわごわした紙の面を指でなぞっていると、まるで和紙と静かに語り合っているような気がして、うれしくなった。

1人から丁寧に指導してくれる、紙すき体験
1人から丁寧に指導してくれる、紙すき体験。おそるおそる挑戦してみるも、モノづくりの面白さに目覚めたかも
土佐和紙工芸村くらうど

住所/高知県吾川郡いの町鹿敷1226 TEL/088(892)1001
営業時間/午前9時~午後9時 休み/水曜
URL/http://www.qraud-kochi.jp/
※紙すき体験は、ハガキ8枚または色紙2枚で、無地400円(約40分)・草花入り600円(約60分)、午前9時~午後4時30分。
20名以上の場合は要予約


★土佐和紙工芸村内
浜田兄弟和紙製作所・工房hamadawashi

工房「hamadawashi」は、土佐和紙工芸村くらうど内にある。
コウゾを原料処理する共同作業所。今は産業遺産となっている。
浜田治さんの祖父は人間国宝の浜田幸雄氏で、兄はその後継者の浜田洋直さん。土佐典具帖紙を兄弟で広めようと、昨年に工房hamada washiを立ち上げた。


TEL/088(892)1022
営業時間/午前9時~午後5時
URL/http://www.hamadawashi.com

土佐和紙工芸村内 浜田兄弟和紙製作所・工房hamadawashi

みどころ

●いの町 紙の博物館

いの町紙の博物館では、土佐和紙の歴史や作り方などを詳しく展示。職人の紙すきを見学でき、紙すき体験も可能。販売店では、土佐和紙を購入できる。
色も鮮やかな土佐和紙。色や薄さなど様々な種類がある。


住所/高知県吾川郡いの町幸町110-1 TEL/088(893)0886
営業時間/午前9時~午後5時 料金/大人500円、小・中・高校生100円
休み/月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始
※紙すき体験(420円)、体験は午前9時~午後4時
URL/http://kamihaku.com/

いの町 紙の博物館
●仁淀川 かみのこいのぼり

仁淀川橋付近でGWに催される、川を泳ぐ紙のこいのぼり。
2013年5月3日(祝)~5月5日(日)まで。


TEL/いの町観光協会088(893)1211

仁淀川 かみのこいのぼり
TOPに戻る