岡山県中西部の山間にある、銅とベンガラの町、吹屋。江戸時代から明治にかけて、赤色顔料のベンガラ製造により、巨万の富が生み出された町である。現在は、吹屋ふるさと村と称する観光地。赤褐色の古民家が建ち並ぶ景観を、ぜひ一度見てみたい。
町に着き、ボランティアガイドの広兼一勇喜さんに案内してもらった。建物はベンガラ色に統一されて、独特の赤い色を放っている。壁の一部がほんのりピンクがかっているのも美しく、色のシャワーを浴びているようで歩くだけで楽しい。
「郷土館の座敷の壁は、初めにベンガラを塗り、後から漆で仕上げています。建築材は、土台と外柱が栗、敷居は桜とすばらしいものですよ」と、熱心に説明してくれる広兼さん。
旧片山家住宅では、母屋の横に土蔵が構えられ、当時の商家の繁栄ぶりが感じられる。外壁は、腰高格子や出格子、海鼠壁(なまこかべ)と意匠を凝らした造りだ。
町の中心から少し離れた広兼邸は、山の斜面に城郭のごとくそびえ立つ。映画のロケ地としても名高いお屋敷で、1810年の建築である。庭園には池や築山に水琴窟まで配され、茶室に土蔵、向かいの山には個人の神社まであると聞き、その豪勢さに驚いた。