
美術館は、魁夷が景観を損なわないように提案したライトグレーの瀬戸大橋の四国側のたもとにある。万葉ゆかりの史跡が残る沙弥島への散策も楽しい。
展示室を抜けた先に広がる景色に息を呑んだ。ガラス張りのカフェから刻々と移り変わる瀬戸内の海、島、空を望め、絵のように美しい。瀬戸大橋のかかる一番岡山寄りは、魁夷の祖父の出身地・櫃石島(ひついしじま)だ。画伯の心の片隅にあっただろう景色と過ごせ、心が和む。
そのお供にぴったりなのが美術館限定スイーツ。ほんのり塩のきいた餡を青のり入りの皮で包んだ「あまも」は、瀬戸内の風を運んでくれる。「ビスコッティ」は、魁夷の《月光》の樹氷の森から飛び出したようで空想が広がる。
年4回のテーマ展では魁夷の版画作品を中心にした所蔵作品を、春と秋の特別展では所蔵作品以外を楽しめ、何度でも訪れたくなる。
春の特別展
「風景の底力―The Potentiality of Landscape―拡大する日本画 三瀬夏之介 野地美樹子」
2022年4月9日(土)~5月29日(日)
現代日本画に新たな視点を見出して活躍する二人の作家の、斬新な風景への挑戦を紹介します。
第1期テーマ作品展
「山雲涛聲(とうせい)―山と海をめぐる」
2022年6月3日(金)~7月18日(月・祝)
東山魁夷の版画作品を中心とする所蔵作品より、日本の山と海を描いた作品を紹介します。
ご遺族より寄贈された東山魁夷の版画作品や貴重な資料を収蔵。建築家・谷口吉生による建物は作品や風景を楽しめる仕掛けがいっぱい。