
弘法大師が修行したと伝わる心経山から望む多島美。眼下は青木集落(広島)
かつて「塩飽島」と言い、塩飽水軍の本拠地だった本島。
塩飽とは「潮が湧く」の当て字で、見た目は穏やかな海ですが、実際は世界有数の複雑な潮流をしている海域です。ここでは、操船技術に長けた「塩飽水軍」と呼ばれる水夫たちがいて、豊臣秀頼や徳川家康など時の武将や幕府に認められて活躍してきました。造船技術にも優れていた彼らは、塩飽大工としても活躍するようになります。
塩飽大工たちが手がけた100棟ほどの古民家が残る笠島地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。江戸時代に政所であった「塩飽勤番所跡」は、織田信長の朱印状など重要な資料が展示され、本島が歴史の要所であったことがわかります。
壮大な歴史が紡がれた面影を感じながら、島を巡ってみてはいかがでしょう。
丸亀港(香川県)から「本島汽船」で20~35分、本島の泊港へ。また、児島観光港(岡山県)から「むくじ丸海運」で30分。島内はレンタサイクルで巡ると便利。貸し出しは泊港の本島汽船待合所で。(普通自転車1日500円 /電動アシスト付き自転車1日1,500円)
塩飽諸島で最大の面積をもち、切り立った岩山や岩肌があちこちに見られる広島。花崗岩から成る石の産地で、「石の島」とも呼ばれています。とくに青みがかった色合いの「青木石」は徳川幕府の大阪城築城にも使われています。明治から昭和にかけては石材産業で発展し、最盛期には約70の採石場がありました。
令和元年、広島を含む備讃諸島における石の島の物語が日本遺産に認定されました。構成文化財の1つである「尾上邸」は、広島の立石地区にあります。かつて廻船問屋として繁栄した尾上家の屋敷で、築200年と推定される総けやき造りの家屋。地域特有の塩飽大工の意匠が見られます。
高さ4m余りの青木石で築かれた石垣の上に建っており、城と見紛うほど。現在は、宿泊やイベントなどの開催ができる施設に改修され、島に滞在しながら海や山などで島らしい体験コンテンツも楽しめます。
島では、事前予約すれば採石場の見学も可能。自然の恵みを享受して暮らしてきた島の暮らしをのぞきに行こう!
丸亀港(香川県)から「備讃フェリー」で20~45分、広島の江の浦港へ。島内は、船の発着に合わせてコミュニティバスが出ている。レンタサイクルは、江の浦港待合所で1日500円。