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せとうち美術館紀行 第7回 兵庫県立美術館

兵庫県立美術館 西日本最大級の美術館は見どころ満載

兵庫県立美術館に関しての対談5

美術館を中心に街全体でにぎわいを創出

山木:
収集に関しても、蓑館長独自の社会的な視点を入れた形で購入意欲を示されましたが、全体的な美術館の運営や方向付けについてはいかがですか。

館長:
何度も言いますが、美術館を中心に一日この周辺を使って家族で楽しめる、そういう親しみのある美術館、誰でも気軽に訪れられる敷居のない美術館にしたいと思います。兵庫県立美術館と神戸市立王子動物園をつなぐ南北約1キロの道が「ミュージアムロード」と名付けられたのもそういうことからです。ミュージアムロード周辺に楽しいお店や美術関連のショップ、レストラン、喫茶店、ギャラリーなどを引っ張ってきてアートストリートにし、夜までこの周辺で遊べる。そういうにぎやかさをつくって、常にいっぱい人が集まる美術館にしたいのです。
そのためには企画展も大事だし、常設展も大事です。それから今やっているイベントも1ヶ月に1、2回ではなく、週に1回は必ずレクチャーをやったり、映画を流したりして、この美術館に来ると常に楽しいイベントをやっているというようにしたいですね。
企画展では、学芸員が長年かけてやってきたいろんな研究を結実させるような展覧会やたくさんの人に理解してもらえるような展覧会、そして、アニメを使ったスタジオ・ジブリの展覧会のような企画展を年に1、2本は作っていきたいと考えています。

山木:
独自の企画展をつくるということですね。

館長:
そうです。巡回している展覧会ではありません。

山木:
美術館の気骨のあるところを見せるには、自分のところの学芸員のスタッフで企画展が組めるというのが重要ですね。

館長:
現在、当館には学芸員が15人ぐらいいますので、ぜひいい企画をやってほしいです。

山木:
町おこしではありませんが、ミュージアムロードを活性化させたいということで安藤忠雄さんがこぶしの木を植樹提供されたと伺いました。

館長:
そうです。メンテナンス付きです。

山木:
すばらしい話ですね。

館長:
植えるのは楽ですが、メンテナンスするのにすごくお金がかかります。安藤さんはそれをご承知ですから、メンテナンス付きで寄付してくださったのです。
そして近隣のお店では、イベントのポスターやインフォメーションを置いてくれています。「兵庫県立美術館応援店」のステッカーの貼ってあるお店で展覧会チケットの半券を提示すると割引をしてくれるなどサービスをしていただいています。

山木:
それはいいですね。

学校団体やご家族を手厚くサポートし、来館を促す

山木:
教育普及に関しての未来はいかがですか。展望としてこういうことをしていきたいというのはありませんか。

中嶋:
小学校を筆頭に学校団体にまず来ていただきたいというのがございます。そのためのミュージアム・ティーチャーとボランティアは当館には充実しています。

山木:
ミュージアム・ティーチャーはどういう役割で、どういうシステムになっているのですか。

中嶋:
ミュージアム・ティーチャーは現在二人います。どちらも学芸員資格を持っています。

山木:
毎日いらっしゃっているのですか。

中嶋:
毎日ではないですが、週の大半は来ています。

山木:
どういう役割があるのですか。

中嶋:
役割的には美術鑑賞のナビゲートと、主にこどものイベントの制作をするための企画・立案などを担当しています。そしてミュージアム・ボランティアさんとの連携ですね。これが一番大きいです。ミュージアム・ボランティアさんもさまざまな方がおられますので。

山木:
ミュージアム・ボランティアの方と、企画を組んだ学芸員と話し合うこともあるのですか。

中嶋:
大きな特別展ではこどものイベントが毎回ありますので、事前実習の際に制作の方法などを体験してもらって、いろいろなアイデアをもらっています。

山木:
なるほど。

小野原:
子どもさんにもっと来ていただくために、一時保育をする「美術鑑賞day」も設けています。金沢21世紀美術館では設計段階からこどもを預かるスペースがありますが、兵庫県立美術館はどちらかというとアダルトな感じですので、今はとりあえず会議室を使用しています。すでに2回実施し、とても好評です。今後どのように本格的に実施にしていけばいいか、まだ方向を探っている段階です。

山木:
それはすばらしいですね。

中嶋:
お母さまから「小さいこどもを連れて行ってもいいですか」という問い合わせをよくいただきますので、さまざまな面でご家族をサポートし、美術鑑賞を楽しんでいただきたいと思っています。

山木:
館長のお人柄が楽しいので、きっと身近な楽しい美術館になると思います。最後に抱負を述べて下さい。

館長:
今までの美術館というのは静かで、神聖で、うやうやしく、頭を下げて「すばらしいですね」というものでした。そういうところから脱皮して、みんなが楽しめる美術館にしたいと思っています。

山木:
本日は長時間のインタビューにおつきあい頂き、ありがとうございました。

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