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せとうち美術館紀行 第10回 広島市現代美術館

広島市現代美術館 身近で心に響く現代美術に親しもう

広島市現代美術館に関しての対談5

みんなに愛され、足を運んでもらえる美術館をめざす

対談イメージ

山木:
館長にいろいろなお話をしていただき感じたのは、医学の世界、音楽の世界を専門的に極めていらっしゃるだけにアーカイブの重要性を考えておられるということです。例えばコレクションの予算も復活して、しっかり継続して現代の同時代の美術を収集していくべきだと。このようにアーカイブとしての美術館の役割をお考えなのは、やはり学術の世界を歩んでこられたからなのだと感じました。

また、比治山の高さのことや、高齢者の方への配慮についてもお話しが出ました。わかりやすさ、市民に対するアプローチという点では、広報に関して、どういう情報をセレクトして、精選して伝えていくのがよいのかをお考えのようです。情報量が多いということは学術的なアプローチには必要ですが、あまり情報量を多くすると、人の気持ちや記憶に残りません。どれだけ精選するかが重要です。

さらにアーティストとの関わりもおっしゃっていました。同時代の美術の良さは、ライブ感を持って元気で活躍されているアーティストが多いところです。そういうアーティストとどういうふうに展示やワークショップに取り組むか、力を借りるかというあたりが、これからの美術館の発展にとって、重要なポイントではないかと感じました。

山木 :
最後に、広島市現代美術館の、これからの展望を伺いたいと思います。

館長:
当館の周囲は公園になっていて非常にいい場所です。広島市街地のなかで、このあたりはこれから発展が見込まれています。ロケーションの良さを含めて、みんなが誇りを持って、この美術館のよさをアピールできたらと、願っています。

市民のみなさん、美術愛好家のみなさんに、この美術館を愛してもらいたいという意識を持ち、そのためには、どうしたらよいのだろうかということを職員に真剣に考えてもらいたい。

山木:
そのためにも、館長の力が必要ですね。

館長:
みんなが危機感を持たなくてはいけません。そのためにもどうしたら人が来てくれるかという手当をしないといけません。一番大切なのは、いかに広報をするかということです。

広島市の3館だけでなく、瀬戸内全体が一緒になって美術館巡りのツアーを企画するというぐらいにしなければだめだと思います。

山木:
そうですね。同館です。館長から、今後美術館をどうしていきたいかという抱負をたっぷり伺ったので、後藤さんと山下さんからも一言ずつお願いします。

山下:
ワークショップなどは小中学生が中心になってしまっているので、高校生や中学生の多感な時期に現代美術を見て表現の幅や社会に対するいろいろな見方があることをアピールしていけるようなものができればと考えています。同時に、65歳以上の年齢の方にも、積極的にアピールしていくことが大切だと感じています。

山木:
後藤さんはいかがですか。この美術館を発展させたいという思いは、館長同様に強いと思いますが。

後藤:
当館は地方の美術館でありながらコンテンツといいますか、ハード面もソフト面もとてもクオリティの高いものをもっていると思います。それをいかにみなさんに知っていただくかが課題です。館長も申しておりましたが、地元の方に、当館への理解をいっそう深めていただき、愛していただく。広報として外に出て地元のみなさんとお話しをしたり、接したりする機会が多いのですが、必ずしも好意的なご意見ばかりではありません。この点をなんとか・・・

山木:
おそらく先入観があるんじゃないでしょうか。現代美術は難しいと。この美術館まで来ていただいたらそういう誤解は解ける場合が多いでしょうね。

内観

後藤:
そうですね。何をやっているかわからないという方もたくさんいらっしゃるので、まずは足を運んでいただき、好きか嫌いか、おもしろいか、おもしろくないかを率直に語っていただきたいですね。ショップも、喫茶でのお食事も、周りの景色の美しさも、すべてが美術館の魅力なんです。そのこともお伝えしたいと思っています。

県外の方や国外の方には、平和都市・広島にある現代美術館ゆえに、そこから発信できる素晴らしい展覧会をやっていますから、それをもっとアピールしたいですね。「瀬戸内国際芸術祭」はアートツーリズムを掲げて、アートが観光資源になることをアピールできた成功事例だと思います。魅力的な観光都市・広島の観光資源のひとつとして、みなさんにこの美術館の素晴らしさを広報していきたいと思っています。

山木:
本当に素晴らしい作品をコレクションなさっています。先ほど話題に出た岡本太郎やイサム・ノグチだけでなく、草間彌生も、オノ・ヨーコも、宇佐美圭司も、きわめて質の高い作品を収蔵しています。とりわけ、若者に人気がある村上隆と奈良美智も、こちらの美術館のテーマに基づいて、素晴らしい作品を制作しています。

展示イメージ

後藤:
はい。コレクションも国内外に誇れるラインナップだと思いますし、企画展は広島市現代美術館ならではの自主企画展も行います。広島で見るからこそ価値があるような、現代の社会について思いを巡らせることができる貴重な展覧会を開催しています。ですから、ぜひ、ご来館いただき、そうした作品の数々をご覧いただきたいです。また、山下を中心に教育普及が飛躍的に充実し、クオリティの高い活動になってきていると自負しています。

山木:
本当にそうですね。本日はいろいろなお話をありがとうございました。

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