シルクロードや仏教文化、日本の自然美をテーマにした作品で知られる日本画家・平山郁夫。その美意識と感性を育んだのは、生口島で生まれ、過ごした日々でした。中学生になると広島市内の学校に進学。15歳で被爆し、強烈な体験が、後に「平和の祈りを込めて絵を描きたい」という思いにつながります。故郷にある平山郁夫美術館では、足跡をたどりながら作品に込められた思いに触れることができます。
見どころのひとつは、幼年期の絵。絵を描くのが大好きで、5歳の時や小学校の長期休みに書いた絵日記などが残っており、観察眼と表現力にうならされます。
終戦後は東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学。卒業制作では、「芸術とは美しいものを表現すること」という、この道へ導いた大叔父で同校の元教授だった清水南山の言葉を思い出し、故郷の《三姉妹》を描きました。平山画伯にとって美しいと思うのは瀬戸内の風景や人々。初期の作品はそれらを描いたものが多く、温もりを感じます。しかし、展覧会に入選するもののなかなか認められず、原爆症にも悩まされました。