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アートトラベラー

平山郁夫美術館 美しい瀬戸内と被爆体験が原点

シルクロードや仏教文化、日本の自然美をテーマにした作品で知られる日本画家・平山郁夫。その美意識と感性を育んだのは、生口島で生まれ、過ごした日々でした。中学生になると広島市内の学校に進学。15歳で被爆し、強烈な体験が、後に「平和の祈りを込めて絵を描きたい」という思いにつながります。故郷にある平山郁夫美術館では、足跡をたどりながら作品に込められた思いに触れることができます。

見どころのひとつは、幼年期の絵。絵を描くのが大好きで、5歳の時や小学校の長期休みに書いた絵日記などが残っており、観察眼と表現力にうならされます。

終戦後は東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学。卒業制作では、「芸術とは美しいものを表現すること」という、この道へ導いた大叔父で同校の元教授だった清水南山の言葉を思い出し、故郷の《三姉妹》を描きました。平山画伯にとって美しいと思うのは瀬戸内の風景や人々。初期の作品はそれらを描いたものが多く、温もりを感じます。しかし、展覧会に入選するもののなかなか認められず、原爆症にも悩まされました。

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平和への祈りを込めた「シルクロード」シリーズ

《群畜穹閭》1973年 アレッポ(シリア)の家畜市場を描いた作品で、当時は中東の物資の集散地としてにぎわっていた。戦争が始まると交易は途絶えてしまう。平山画伯にとって、ラクダのキャラバンは平和のシンボルだった。

転機となったのは、シルクロードを旅する求法の僧、玄奘三蔵を描いた《仏教伝来》です。原爆症で死の恐怖に向き合う中、「平和を祈る作品を一枚でも描きたい」と制作。美術評論家に新聞で初めて取り上げられ、生きる意欲がわきました。以来、仏教や日本文化の源流を求めてシルクロードを旅して描き続け、文化財保護にも力を入れました。

エントランスでは、陶板画で原寸再現された《仏教伝来》を見ることができます。

展示室では、「シルクロード」シリーズが展示替えされながら鑑賞できます。美しい色彩や繊細ながら力強い作品に感情を揺さぶられます。興味深いのは、下図(下絵)の展示。日本画は絵の具が乾くのが早く、修正が難しいため、下図で構想を確定して本画を描きます。本画では見えなくなる線描が美しく、制作過程を楽しめます。

ほかにも瀬戸内しまなみ海道の開通記念に描き下ろした「しまなみ海道五十三次」も見逃せません。

DATA

平山郁夫美術館

住所/広島県尾道市瀬戸田町沢200-2
TEL/0845-27-3800
開館時間/9:00~17:00 (入館は16:30まで)
休館日/原則無休
※展示替えなど臨時で一部鑑賞できないこともある
料金/一般920〜1,000円、大学生・高校生410円、中学生・小学生210円。
駐車場/あり

MAP

展覧会情報

「無言館」所蔵作品による〈ふたりの被爆画学生〉展
‐手島守之輔・伊藤守正‐

2022年5月30日(月)~7月22日(金) ※会期中無休
「無言館」は、第二次世界大戦で没した画学生を慰霊するために作られた長野県にある戦没画学生慰霊美術館。ここに作品が収蔵されている手島守之輔・伊藤守正は、原爆投下直後の広島、長崎に入り、被爆により命を奪われました。彼らが残した作品を展示します。

せとうち美術館ネットワーク
スタンプラリー

2022年4月1日~2023年3月31日

JB本四高速が、瀬戸内の美術館・博物館と連携し、瀬戸内のアートの魅力を発信する「せとうち美術館ネットワーク」。右の冊子に参加している81の美術館・博物館を巡ると、スタンプの数に応じて図書カードや参加施設のオリジナルグッズがもらえます。冊子は、ネットワーク施設と本四高速道路SA・PAで配布しています。
https://www.jb-honshi.co.jp/museum/

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