
主幹周り12m、樹高22.5mもあり、島の守り神として大切にされている。7月中旬は群生するウバユリの白い花で埋めつくされる。県指定天然記念物。
島に降り立ち、集落の細い道を通り抜けていく。志々島を訪れる人のほとんどが目指す樹齢1200年の大楠まで約30分。案内板が出ているから迷うことはない。一直線に向かうのもいいが、寄りたいところがあった。「天空の花畑」だ。島のおばあさんと息子さん夫婦が、「花の島」といわれたかつての景色を復活させようと作っている。夏は花はないけれど見晴らしが良く、港を見下ろし、風に吹かれるのが心地いい。
そこから大楠へは草が茂る坂を上らなければならず、少しきつい。しかし、姿を見て疲れが吹き飛んだ。地面から太い幹が四方八方に伸び、圧倒的な存在感だ。1200年もの間、島を見守り続けた生命力がみなぎっていてパワーをもらう。
さらに尾根に出て西へ歩くと、島の最高点「横尾(よこぼ)の辻(つじ)」だ。標高109mから全方向に視界が開け、瀬戸内海の絶景をひとり占めした。
海辺でのんびり過ごすのも島ならではの楽しみだ。島に着いたときから気になっていたのが、港近くに並んでいるカラフルな小さな家。ガリバーになって小人の世界へ迷い込んだみたいだ。これは「埋(う)め墓(はか)」。志々島が属する塩飽諸島では、故人を埋葬する「埋め墓」と、お参りする「参り墓」の2つのお墓をつくる両墓制の風習があり、その名残が見られるのだ。
また、昔ながらの文化として、発酵茶である碁石茶で作った茶粥も日常的に食べられている。
昭和の時代で時間が止まったかのような家並みも、ノスタルジックでいい。昔は漁業や花卉栽培が盛んで、最盛期は千人以上が住んでいたそうだ。現在の人口は19人。島唯一の休憩処「くすくす」には島の人がよく集っている。島に着いたらまずここに立ち寄るのもおすすめだ。質問をすると、いろいろ教えてくれる。穏やかに流れる時間にすっかり癒やされた。
築100年の民家を改装した憩いの場。飲料の販売や、コーヒー、島で採れた魚や野菜をメインにした志々島カレー(1,000円)、くすくすランチ(1,500円、予約要)を味わえる。8人以上の予約なら茶粥も用意してもらえる。
志々島は、香川県三豊市の沖に位置する周囲3.8㎞の小さな島。高速連絡船でアクセスでき、直行便と粟島経由の2ルートがある。
直行便(所要時間約20分)
宮の下港発(志々島港着)
8:30/12:45/16:20
志々島港発(宮の下港着)
7:25/11:30/15:55
※粟島経由便はお問い合わせください。
TEL/0875-83-3204(粟島汽船)
料金/350円(志々島港―宮の下港)
休憩処「くすくす」で飲料は購入できるが、営業時間が限られる。水筒を持参しよう。
夏場の島歩きは大変。帽子など日除けを忘れず、水分補給をこまめに。
夏は蚊や虫がいっぱい。虫除けグッズで予防を。