船上から見上げた大鳴門橋の巨大さに息を呑んだ。そしてなんと海には滝ができている!! 瀬戸内海と紀伊水道の、海面の高さが異なっているのだ。干潮時には大きく盛り上がった瀬戸内海側から、海の水が滝のように流れ落ちる。2m近い落差があるという。この滝の近くで激流がぶつかり合ってできるのが鳴門の渦潮だ。海の滝と渦巻く潮流の眺めはまさに世界の奇観。大自然のパワーに圧倒されてしまった。
大鳴門橋の真下、瀬戸内海と太平洋の境目で潮の干満により渦潮が起こる。潮流は最大で時速20kmに達するときもあり、渦の大きさも30m近くにもなる。「うずしおクルーズ」は、咸臨丸と日本丸の2隻の帆船が交互に出帆している。潮の干満差は季節や時刻によって違うので、観潮の際は同社HPで、潮見表を確認しておこう。
うずしおクルーズ
【DATA】兵庫県南あわじ市福良港 うずしおドームなないろ館 Tel/0799-52-0054 URL/
http://www.uzu-shio.com
自然の驚異に感激して、大いにテンションが上がったところで、いよいよ鳴門グルメ旅の始まりだ。この激しい潮流にもまれた鳴門鯛や、潮流が運ぶ豊かな養分で育つ鳴門わかめが代表格。なると金時やカキなどもあり、冬の食材には事欠かない。期待に胸を躍らせながら鳴門へ向かう。

冬はなんといっても、ホクホクの「なると金時」だろう。なると金時は、砂地の畑で栽培したサツマイモとしてブランド認定されている。形はきれいな紡錘形で、肉質はしっかりとして、上品な甘さが特徴だ。その生産地のひとつ、鳴門市東南部の里浦町を訪ねた。この町で生産されている、なると金時は「里むすめ」という名の一級品だ。
整然と手入れされた畑には、海水を含んだ砂が定期的に運び込まれている。手で掘ると、すぐにポロポロと崩れた。水はけが良く、海のミネラル分をたっぷり含んだこの砂地が、里むすめの美味しさの秘密である。
茎と葉を刈り取り、盛り土の上に顔を出した芋をトラクターで収穫していく。手で掘る「芋掘り体験」は例年8~9月頃実施。お問い合わせは、JA里浦(Tel/088-685-2111)へ
9月に収穫した芋が、2~3か月ほど定温貯蔵されて、12月頃から市場に出回る。なると金時は定温貯蔵することで芋の水分がとび、甘味がぐんと増す
町内の「料亭にし野」では里むすめづくしの料理が食べられるという。その名も、芋御膳だ。コロッケや大学芋は、里むすめのやさしい甘さが印象的。珍しかったのは白和えで、薄く切った芋の感触が新鮮だ。鳴門鯛の刺身の、つまが芋の細切りだったのはサプライズ! しゃきしゃき感に驚いた。さすがに本場だ、こんなにいろんな料理に芋が合うとはね。芋を見直した、いや、里むすめの器量に惚れてしまったと言うべきかな。