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せとうち美術館紀行 第14回 横尾忠則現代美術館

あふれるエネルギーに圧倒される、横尾忠則芸術の殿堂

横尾忠則現代美術館に関しての対談5

現在も精力的に制作、展覧会が国内外で目白押し

山木:
横尾忠則さんの近況をおうかがいできますか。最新の絵に象徴されるほど元気だということはわかりますが、もう少し詳しくご存じのことがあれば教えてください。

山本:
今年に入ってからは本当に体調が良く、制作意欲があり、とにかく絵をたくさん描いておられます。

展覧会も多く開催され、この9月(2018年)は特に重なっています。ニューヨークのアルバーツ・ベンダ・ギャラリーという大きなギャラリーで開催される展覧会では、当館で現在開催中の「画家の肖像」(2018年5月26日~8月26日)で展示している大きな自画像をはじめ、かなりたくさんの新作が展示されると思います。

同じく9月には、兵庫県の西脇市岡之山美術館という、横尾さんの故郷にある美術館で、6年ぶりに個展が開催されます。近隣地域特産の杉原紙という和紙があり、それを使った非常に実験的な作品が新作として出ます。当館でも次の展覧会として、2018年9月15日から12月24日まで「横尾忠則 在庫一掃大放出展」を開催します。

山木:
そのタイトルは冗談ではないんですか。

山本:
大真面目です(笑)。今までうちで並べたことがない作品を展示します。

対談の様子

山木:
そういうタイトルにオーケーを出す横尾さんは心が広いですね。

山本:
うちでないとできないと思います。会期中にチンドン屋さんを呼んでライブをやる予定です。

山木:
面白そうですね。2019年1月26日から5月6日までの展覧会は「横尾忠則 大公開制作劇場」となっています。これは公開制作を行うということですか。

山本:
今まで横尾さんが公開制作をされてきた作品と、そのドキュメントを紹介します。おそらく実際に公開制作もやるのではないかなと思います。体調次第ですけれど。

山木:
今までの記録というか動画も残っているのですか。

山本:
いま担当学芸員が必死になって集めているところです。先ほど申し上げたように'80年代前半の絵はほとんどが公開制作です。全部は入りきらないので、セレクトすると思います。

山木:
もし公開制作をされたら、何台もカメラを用意して撮影されたらいいですね。

対談の様子

山本:
そうですね。当館での公開制作では2カメラで撮影しました。 今年の9月に話を戻しますと、もうひとつ大日本印刷さんが運営しているギンザ・グラフィック・ギャラリーで、当館で過去にやった展覧会なんですけど「横尾忠則 幻花幻想幻画譚」というのを開催します。

1970年代に新聞連載された瀬戸内晴美(寂聴)さんの時代小説『幻花』の挿絵の展覧会で、全部で400点近くあります。ある意味グラフィック作品の最高傑作ともいえる緻密な作品で、東京で全部展示するのは初めてではないでしょうか。

山木:
挿絵原画ですから手書きですよね。

山本:
手書きです。美しいですよ。話題になると思います。

山木:
横尾さんは幅が広くて、挿絵だけではなくて、絵本もつくっていませんでしたか。

山本:
あります。当館が開館してから2冊作っています。開館2年目に「横尾忠則 どうぶつ図鑑」(2013年7月13日~9月16日)という展覧会をやりました。横尾さんの絵の中に動物がいっぱい出てくるんです。

館長:
当館の向かいが神戸市立王子動物園で、そこから子どもたちに親しまれた動物を剥製にしたものを借りて展示しました。

どうぶつ図鑑

山本:
ペンギンの剥製が絵を見ていたりするんですね。夏でたくさんの子どもさんに見てほしい展覧会だったので真面目な図録はやめて絵本にしようということで、『どうぶつ図鑑』という絵本をつくりました。点線が入っていて、はさみで切って動物をおうちに入れるというものです。切ると後ろのページが透けて見えて、新しい絵本が出来上がります。もったいなくてなかなか切れないですけれど(笑)。

山木:
今もミュージアムショップで売っていますね。

山本:
はい。もう一冊は、ぬりえをつくりました。

ぬりえ

山木:
それは絵本ですか。

山本:
絵本です。

館長:
いまぬりえがすごくはやっているんですよ。

山本:
『どうぶつ図鑑』もぬりえもインタラクティブな絵本です。

山木:
ぬりえは原画通りに縁取りしているんですね。

山本:
そうです。「横尾探検隊 LOST IN YOKOO JUNGLE」(2014年4月12日~6月29日)という展覧会を開催したのですが、これも子どもさんに来てほしい展覧会だったので、図録じゃなくてぬりえにしましょうということで。

 

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