塔の架設

吊橋のなかで、ひときわ高くそびえている構造物が塔です。2本の巨大ケーブルをその先端で支え、優美なケーブルの形を保つとともに、強大な鉛直力を基礎に伝えています。塔の高さは、吊橋の中央支間長(塔と塔の間の距離)や桁下の航路高さから決定します。南北備讃瀬戸大橋では、もっとも高い5Pで海面上約194mもの高さがあります。塔は鋼鉄製で、一つの柱を平面に3分割、鉛直方向に16~18段に分割して工場製作し、これを現地で大型クレーンを使って設置しました。塔の製作・架設にあたっては、特に、①塔を高い精度で鉛直に建てる ②上下のブロックの端面での接触率(メタルタッチ率)を高めることが課題でした。

写真:塔柱の工場製作

塔柱の工場製作

分割製作される塔柱1ブロックの大きさは、最大高さ13m、重さ120t以下です。三つのブロックの製作が完了した後、これらを一体にして上下の端面が平行になるよう機械切削を行いました。写真は、塔柱第1段の組立状況です。

写真:塔柱の仮組立

塔柱の仮組立

上下に隣接する塔柱ブロック相互の精度の確認や塔柱と斜材・水平材との取り合いの精度確認は、工場内で部材を横置き状態で部分的に仮組立することにより行いました。仮組立における検査は温度変化の小さい夜間に実施し、寸法やメタルタッチ率の測定を行いました。

写真:塔基部ブロックの架設

塔基部ブロックの架設

塔基部は、底板を介して塔柱からの大きな圧縮力をコンクリートに直接伝える役割があることから、箱形をした一般塔柱部と異なり格子構造の柱部で構成された大型ブロックとなっています。このため、この部分は起重機船を用いて設置されました。

写真:クリーパークレーンによる塔の架設

クリーパークレーンによる塔の架設

瀬戸大橋の吊橋の塔6基のうち5基では、部材の架設のためにクリーパークレーンが用いられました。このクレーンは、架設の進捗にしたがって塔壁に取り付けたレールに沿ってせり上がることができるもので、全体の設備が比較的小さくて済む利点があります。写真は、手前から、最も高い南備讃瀬戸大橋北側塔(5P)、4Aアンカレイジ、最初に完成した北備讃瀬戸大橋南側塔(3P)、完成間近の北備讃瀬戸大橋北側塔(2P)です。

写真:タワークレーンによる塔の架設

タワークレーンによる塔の架設

南備讃瀬戸大橋南側塔(6P)では、北側塔よりも下部工の完成時期が遅かったことから、大型のタワークレーンを用いて塔架設を行い、工期短縮を図り、塔の完成を北側塔に合わせました。この工法では、クリーパークレーンを用いる場合よりも設備が大がかりになりますが、架設途中のクレーンのせり上げがないことから、工期短縮が図れました。

写真:塔頂サドルの設置

塔頂サドルの設置

塔頂サドルは、塔頂においてケーブルを収める鞍状の金具です。約150tの重量のサドルは、塔の架設の終了後、直ちに設置されました。