長大橋技術センター

疲労

効果的かつ効率的な鋼床版疲労亀裂の補修方法の開発を行っています。

鋼床版疲労亀裂の補修法

鋼床版は、コンクリート床板と比較し軽量かつ短期間で架設することができ、設計の自由度が高いという特徴があります。そのため、明石海峡大橋をはじめとした長大橋や、架設の制約が多い都市高速などでは多く採用されている床版形式です。

鋼床版
鋼床版

近年、重交通路線を中心にいくつかのタイプの疲労亀裂が多数発見されており、本州四国連絡高速道路の鋼床版でも同様な亀裂を確認しております。これらの亀裂の補修には、従来、舗装を剥いでデッキプレート上面から施工する方法や、再溶接する方法などが用いられていました。例えば上面から施工する方法では、代替道路が無い海峡を跨ぐ長大橋や重交通路線となる都市高速などでは、通行止めなどの交通規制による社会的影響が大きく、また、再溶接では交通規制の必要がありませんが亀裂再発が懸念されるなど課題がありました。つまり、効果的かつ効率的な補修方法の技術開発が望まれていました。

ビード貫通亀裂
ビード貫通亀裂

本四高速では、関西大学と共同でデッキプレート下面側からのみで施工可能かつ効果的な補修方法を開発しました。具体的には、デッキプレートとUリブの溶接による接合に代わり、当て板をそれぞれにボルトあるいはネジで接合し力を伝達する方法です。この工法の特徴は、デッキプレートと当て板の接合にスレッドローリングねじ(TRS : Thread Rolling Screw) を用いており、削孔やTRSの打ち込みで舗装を傷めることなく、デッキプレート下面からのみで施工が可能であることです。

補修断面図
補修断面図

施工にあたってはマニュアルを作成するとともに、舗装を傷めないようにデッキプレートに削孔する装置や、TRSを垂直に打ち込む治具など施工を支援する工具等を東大阪橋梁維持管理研究会(当時)と共同で開発しました。また、本手法で補修を行った鋼床版の試験体を製作し、疲労試験により十分な性能を発揮することを確認しております。

現在、開発した補修方法によって施工試験を経て実橋で発生した亀裂数カ所にて試験施工を実施し、耐久性等の確認などを行っております。また、開発した補修方法は関西大学と共同で特許出願しております。

※スレッドローリングねじ(TRS : Thread Rolling Screw)とは、自身が孔壁にめねじを形成しながらねじ込むことが可能な「ねじ」です。今回の様なケースでは、当て板をガイドにデッキプレートを削孔するだけで、TRSを打ち込むことが可能です。なお、TRSは市販のインパクトレンチで施工できます。

補修後の状況(塗装前)
補修後の状況(塗装前)

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