長大橋の耐風安定化対策について、維持管理面の改善を目的として再評価を行っています。
耐風安定化対策の再評価
本州四国連絡道路の海峡部長大橋の設計、施工にあたっては、耐風安定性をいかに確保するかが重要な課題でした。このため、数多くの現地調査、風洞試験、数値解析等により検討が行われ、様々な耐風対策がとられていますが、これらの機能を長期にわたり保持するためには、多くの維持管理コストが必要となります。このため、いくつかの長大橋では、実橋の振動特性、橋梁位置での風特性など保全段階で得られた知見を活用した耐風性の再評価が行われ、耐風対策やその管理方法を見直すことにより、維持管理コストの縮減を図っています。
明石海峡大橋主塔制振装置メンテナンスサイクルの見直し
明石海峡大橋の主塔は、塔高が高く可とう性があるため、風による有害な振動の発生が想定されました。こういった振動への対応として、数多くの制振装置(ダンパー)を主塔内部(TMD:20基/塔)と主塔-桁間(オイルダンパー:4基/塔)に設置しています。これらの制振装置は、所要の性能を維持するために定期的な分解整備が必要であり、その頻度によっては維持管理コストが膨大になることが見込まれていました。そこで、供用後に得られたデータ(橋梁の振動特性やダンパーの制振性能など)を活用して再評価を行いました。結果として、制振装置の分解整備サイクルを大幅に長期化することが可能であること,これによって維持管理コストを大幅に縮減できることが分かりました。
明石海峡大橋主塔の制振装置
TMD
門崎高架橋耐風安定化部材の撤去
門崎高架橋は大鳴門橋に接続する高架橋で、大鳴門橋と同等の高い設計風速が適用されるとともに、岬の急峻な地形に沿って建設されることから、建設段階において多くの風洞試験が実施されました。その結果、渦励振対策としてダブルフラップ、ギャロッピング対策として下部スカートといった耐風安定化部材が設置されています。これらの部材は長期にわたって厳しい自然環境下に晒されたため、腐食が大きく進行し、部材の交換が必要となりました。そこで将来の維持管理費を低減することを目的に、建設後に得られた知見(橋梁の振動特性や現地の風環境)を基に耐風性の再評価を行いました。
門崎高架橋の桁断面
耐風安定化部材の腐食状況
門崎高架橋全橋風洞試験
瀬戸大橋吊橋の耐風性再評価
瀬戸大橋の吊橋3橋は、トラス補剛桁の上側を道路が下側を鉄道が利用する、二層構造の道路鉄道併用橋となっています。また、耐風安定性を確保する目的で、上路床版の中央分離帯と路肩部分の一部がオープングレーチングとなっています。一方で、維持管理においては、オープングレーチングを通ってものが鉄道階に落下する懸念があることから、閉塞構造が望ましいと言えます。
瀬戸大橋の補剛桁断面
オープングレーチング
二次元風洞試験