長大橋技術センター

耐震

海峡部橋梁のさらなる耐震性向上を図っています。

耐震性能照査及び耐震補強設計

本四高速の海峡部橋梁は、本四高速独自の耐震基準に基づき設計されています。その耐震基準では、紀伊半島沖・土佐沖で発生するマグニチュード8程度(明石海峡大橋ではマグニチュードM8.5)のプレート境界型地震を想定していました。そのため、マグニチュード7クラスの内陸直下型地震を考慮した設計となっていません。兵庫県南部地震を始めとし近年多発している大規模な内陸直下型地震、また近い将来にその発生が予想されている南海トラフ地震等に対する長大橋の耐震安全性をさらに向上させるため、耐震性能照査を行うとともに耐震補強設計を行いながら、耐震技術の高度化を進めています。

長大橋の耐震性能評価、耐震補強技術の開発にあたっては、長大橋の地震時挙動をいかに正確に捉え、その特性、特徴を把握するかがポイントとなります。そこで、以下の観点から、技術開発を行っています。

  • 多数の部材から構成され長周期構造物である長大橋に適した解析モデルと解析法
  • 他の部材への損傷連鎖等を考慮した耐震性の評価法
  • FEM解析等を用いた部材損傷度評価の高度化
  • 免震・制震等の耐震対策技術の適用

多数の部材から構成され長周期構造物である長大橋に適した解析モデルと解析法

吊橋、斜張橋などの海峡部橋梁には、一般橋には無い特殊な構造が多く採用されており、それらを適切にモデル化して解析を行うことが必要です。またトラス形式の桁を始め、多くの部材から構成されている長大橋に対して、実橋の動的挙動を出来るだけ忠実に再現出来るような耐震解析法の検討を行っています。

長大橋の詳細な解析モデルの例
長大橋の詳細な解析モデルの例

他の部材への損傷連鎖等を考慮した耐震性の評価法

海峡部長大橋には、鋼床版構造が多く用いられています。その鋼床版道路桁を支持する支承は、密閉ゴム支承版支承(BP支承)が多く採用されています。大規模地震時の支承の損傷を考慮した解析モデルを用いて、鋼床版支承部の補強の有無、程度を設計に反映するようにしています。

トラス桁上の鋼床版支承(BP支承)の配置

鋼床版および道路桁支承のモデル化(全支承の再現)
鋼床版および道路桁支承のモデル化(全支承の再現)

支承損傷モデルに与える荷重-変位関係の例
支承損傷モデルに与える
荷重-変位関係の例

FEM解析等を用いた部材損傷度評価の高度化

地震応答解析により得られた結果から合理的な耐震補強設計を行うには、解析結果の評価が必要です。結果の評価が難しい場合などは必要に応じてFEM解析等を用いて、損傷が予想される箇所の損傷度の詳細な評価を行い、補強範囲の適切な設定や補強自体の有無を判断するなどしています。

モデル化の違いによる応答の差異、地震後の供用性などを総合的に勘案し、補強の是非等を判断

③同一部材のファイバーモデルとFEMシェル要素の解析結果の比較検討の実施

ファイバーモデルによる解析結果(最大応答箇所
ファイバーモデルによる解析結果(最大応答箇所)

FEMシェル要素による解析結果(最大応答箇所)
FEMシェル要素による解析結果(最大応答箇所)

→モデル化の違いによる応答の差異、地震後の供用性などを総合的に勘案し、補強の是非等を判断

免震・制震等の耐震対策技術の適用

大規模地震時の耐震対策は補強だけでなく、免震・制震技術を適材適所に用いることで、より合理的、経済的で耐震性の高いものとなる場合があります。一例として、瀬戸中央自動車に位置する櫃石島高架橋トラス部に採用したトラス桁免震対策を紹介します。

瀬戸大橋は道路鉄道併用橋のため、トラス桁内に列車が通る空間が確保されており、列車の架線が取り付く部材は、列車運行等の制約上、実質的に補強困難な箇所であり、この箇所は補強対象としない耐震対策が求められました。櫃石島高架橋トラス部は、耐震照査の結果、補強困難箇所を含め多くの部材が損傷する結果となりました。各種対策案の検討の結果、鉄道橋では国内では初となる橋全体を免震化する対策を採用しました。本工法の採用にあたっては、免震化工法の成立可能性を含めた構造の観点、施工性、経済性など様々な観点からの検討を重ねました。道鉄併用橋という特殊性から、隣接する橋から連続するレールが橋体の動きを拘束する効果など、最新の知見を取り込み、設計に反映しました。

櫃石島高架橋トラス部
櫃石島高架橋トラス部

補強困難箇所(架線が取り付く部材)
補強困難箇所(架線が取り付く部材)

国内初となる道路鉄道併用橋(櫃石島高架橋トラス部)の免震化による耐震対策
国内初となる道路鉄道併用橋(櫃石島高架橋トラス部)の免震化による耐震対策

レールによる橋体の橋軸方向の拘束効果を考慮した解析モデル
レールによる橋体の橋軸方向の拘束効果を考慮した解析モデル

トップへ
戻る