土木遺産芸予要塞
日露戦争(1904〜1905年)に備えて、瀬戸内海への敵艦船の侵入を阻止するため、1897年〜1902年に来島海峡の「小島」と三原水道の「大久野島」に、砲台を備えた要塞(芸予要塞)が設置されました。しかし、豊予要塞の完成などにより使用されることなく1924年に廃止されました。
現在、この2つの島には、いずれも北部・中部・南部の砲台跡などが残されています。
小島(おしま)
小島は、来島海峡大橋の西側に位置する、面積0.5Km²、周囲3kmの細長い小さな島です。人口は数十人で、今治の波止浜から「くるしまフェリー(波止浜〜来島〜小島〜馬島)」でアクセスできます。小島には北部・中部・南部砲台のほか、司令塔、弾薬庫、火力発電所、地下兵舎などが設置され、砲台には榴弾砲(りゅうだんほう)、加農砲(かのんほう)、速射砲などが設置されました。1924年の廃止後は、砲台は軍用機の爆撃演習の目標とされ、のち地元に払い下げられました。
1970年以降、砲台跡地への道路整備が行われ、きちんと管理されているため、北部・中部・南部の砲台跡には徒歩で行くことが出来ます。小島砲台跡は、我が国に現存する最大級かつ保存状態のよい明治期の石造り砲台として、2001年に土木学会選奨土木遺産に認定されました。
小島のフェリー乗り場には、NHKドラマ「坂の上の雲」で使用された28cm榴弾砲(中部砲台に6門設置されていたが、うち2門は旅順戦に使用された)のレプリカが展示されています。なお、村上水軍の根拠地として有名な「来島」は、小島の南にあり面積0.04 Km²と小島より小さい島です。
大久野島
「地図から消された島」、「毒ガスの島」と呼ばれる大久野島は、面積70ha、周囲4.3kmの島です。大久野島には、1929年から化学兵器製造の拠点として毒ガス工場が設置されていましたが、第二次世界大戦後にGHQにより施設が破壊されました。この不幸な歴史を風化させないため、1988年に毒ガス資料館が開館しました。
近年は、島外から持ち込まれたウサギが繁殖し、「ウサギの楽園」としても有名となり、餌用にキャベツなどを持参する観光客も多くいます。この島には国民休暇村があり、宿泊や食事が可能であり、島内には散策コースが整備されているため、レンタサイクルや徒歩により、毒ガス施設跡や北部・中部・南部の砲台跡などに行くことが出来ます。
大久野島へは、大三島・盛港(愛媛県)や忠海港(広島県)から大三島フェリー等を利用します。なお、大久野島は一般車の乗り入れは禁止されているため、無料バスが国民休暇村と港の間を運行しています。