土木遺産満濃池と豊稔池

讃岐(香川県)には多くの「ため池」がありますが、満濃池と豊稔池がよく知られています。この2つのため池は、2008年度に近代化産業遺産(経済産業省)として認定されました

満濃池(まんのういけ):仲多度郡まんのう町

満濃池は日本最大の灌漑用ため池で、貯水量は1,540万m³です。当初は、700年頃作られましたが、818年に土の堤防が決壊し、821年に讃岐生まれの「空海(弘法大師)」により修築されました。空海(774-835年)は遣唐使の留学僧として唐に渡り、多くの知識や技術を取得して帰国しました。空海が堤防の修築時に導入した技術は、①アーチ式の採用(水圧や盛土量を少なくするため直線式からアーチ式とした)、②余水吐き(よすいばき)の設置(洪水時に大量の水が堤防を越えないよう堤防横の岩盤を掘って余計な水を下流に流す)、③しがら工の設置(堤防が浸食されないよう、堤防内側の水際に木杭を打って粗朶(そだ)や竹などをくくりつけた)、の3つといわれています。その後も、満濃池では決壊・復旧や嵩上げ工事が繰り返されています。現在の堤防は、高さ32m、長さ156mのアーチ式であり、余水吐きはコンクリート製、侵食対策は石積みに変わりましたが、空海時代の基本的な技術は現在にも生かされています。

満濃池
満濃池
満濃池堤防
満濃池堤防(手前が余水吐き)

豊稔池(ほうねんいけ):観音寺市

豊稔池の堰堤は、1926(T15)年に着工、1929(S4)年に竣工した我が国最古の5径間マルチプルアーチで、有効貯水量は約160万m³です。この堰堤は、高さ30m、延長145mで、延べ15万人により建設されました。この堰堤の設計・施工を指導したのは、国の重要文化財に指定されている神戸市の布引五本松ダムなどを設計した佐藤藤次郎です。

堰堤は、漏水や老朽化により、1940年代と1989〜1993年に改修工事が行われ、上流側はコンクリートで補強されていますが、下流側は石積みが残されています。

この堰堤は、当時最新式のマルチプルアーチが採用されるなど土木技術史上高い価値があることから、2006(H18)年に国の重要文化財に指定されました。また、遊水公園が設置されています。

豊稔池のマルチプルアーチ堰堤
豊稔池のマルチプルアーチ堰堤
豊稔池 貯水状況(満杯)
貯水状況(満杯)
豊稔池 上部から見た湧水公園
上部から見た湧水公園
豊稔池 旧土砂吐樋門などの展示
旧土砂吐樋門などの展示